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内容説明
仏教の経典を求めて、あるいは僧院での修学に、そして国の密命を帯びて、鎖国状態のチベットに潜入した10人の日本人を、新発見の資料と現地を含めた取材で探ったドキュメンタリー。
当時のチベットの特異性と歴史に翻弄された日本人の稀有な体験を著わしたノンフィクション。
なかでも仏教の原典を求めて潜入した河口慧海や能海寛、青木文教などの稀有な旅やその足跡をたどりながら、鎖国時代のチベットの特異性を随所に盛り込む。
一方、野元甚蔵と西川一三は、ともにモンゴル、チベットの草原でモンゴル人になりすまして特務機関の研究生として生き抜き、帰国後の不遇な時代、晩年の知られざる日々などにも言及される。
10人が実践した旅はそれぞれにきわめて稀なものであったが、そのなかでも特に象徴的な体験をした河口慧海らに焦点をあて、2冊の『西蔵漂泊』を大幅に再構成、さらに最近の動向も含めて加筆、1冊に再編集、なによりも読みやすさを心がけた。
当時のチベットの特異性と歴史に翻弄された日本人の稀有な体験を著わしたノンフィクション。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
BLACK無糖好き
15
明治から大正、昭和にかけてチベットに潜入した日本人10人(河口慧海、能海寛、寺本婉雅、成田安輝、矢島保治郎、青木文教、多田等観、野元甚蔵、木村肥佐生、西川一三)。仏教者、冒険旅行者、情報員、夫々の立場での活動の記録を、当時の国際情勢とも絡めながら辿る。宗教の探求や政治的な思惑もあるが、本書の基調テーマは"旅と人間"。現代人にはとてもマネできないようなタフな行程を踏破し、チベットでの文化の奥深さを体験する。◆旅は人生に彩りを与えてくれるんだよなぁ。ここ数年すっかり旅に出なくなってしまった^^; 2017/04/28
pitch
6
明治から第二次大戦期までの期間、当時秘境であったチベットに、様々な理由から入った十人の日本人の話。読み終わってみると、チベットについて知らなかったことも多かったし、何より面白く読めたと思うのだけど、読んでる途中は何だかスッキリしなかった。おそらく著者の思い入れが強すぎて、総論なんだか各論なんだか判然としない構成になってるためか。むしろここに出てきた各人の体験記を読みたくなった。2019/08/17
Hisatomi Maria Gratia Yuki
2
強くチベットに行きたいと願った人よりも、最初はたいして興味もなかった人の方が、なぜか長くチベットに滞在することになったのが不思議。そして、同時期にチベットに滞在していた人同士が、なぜか物別れするというのも……。アカデミックな事情がからんで、というのもあるだろうけど、そこがなんとももどかしい。そして立派な先生だと思っていても、やっぱり人間ってそんなに変わらないものなのね、とも思う。2017/06/11
梅子
1
かつて命懸けでラサを目指した日本人10人の記録、とはいっても一人一人の出発から帰国までを地道に記すのではなく(それは本人達が自分の著作等で既に記している)、それぞれの旅を連関させ、作者なりに時代背景や彼らの共通点を推測しながら、1つの時代を扱った歴史書のような書き方をしている。その試みは重要だが、まずは本人達が記した記録書を楽しんでから読むのが正解かもしれない。2017/07/20
ヨシモト@更新の度にナイスつけるの止めてね
0
青木文教、多田等觀、実弟大谷尊由といった関係者を派遣しておきながら、不思議とチベットへの関心が薄かったというのは、大谷光瑞の七不思議の一つかもしれない。西蔵は彼にとって巨の中の小、多の中の一だったのだろうか。それにしても、この本は再構成で読み易くなったということは、上下巻のオリジナルは、よほど読みにくかったのだろうな。2019/05/10