内容説明
残虐な事件が起こるたび,その〈悪〉をめぐる評論が喧しい.しかし,〈悪〉を指弾する人々自身は,〈悪〉とはまったく無縁なのだろうか.そもそも人間にとって〈悪〉とは何であるのか.人間の欲望をとことん見据え,この問題に取り組んだのがカントだった.本書では,さまざまな文学作品,宗教書などの事例を引きつつ,カントの倫理学を〈悪〉の側面から読み解く.
目次
目 次
はじめに
第一章 「道徳的善さ」とは何か
ラスコーリニコフ/思索によってではなく行為によってはじめて道徳的世界が開かれる/道徳的センス/善意志/ 「義務に適った行為」と「義務からの行為」/道徳法則と定言命法/格律と性格/命法と行為とのあいだ/目的としての人間性/形式としての悪/肥沃な低地
第二章 自 己 愛
誰も自己愛の引力圏から抜け出すことはできない/ 「うぬぼれ」というもの/自己愛と定言命法/自殺について/より完全になろうとする義務/社会的功績は負い目である/賢さの原理/世間的な賢さと私的な賢さ/道徳的善さと純粋さ/善を求めると悪に陥るという構造/幸福の追求/幸福を受けるに値する/苦行の否定/他人に同情すべきか/自己犠牲的行為
第三章 嘘
適法的行為を器用にこなす人々/道徳法則に対する尊敬/真実性の原則/真実性と友の生命/窮余の嘘/愛と嘘
第四章 この世の掟との闘争
適法的行為と非適法的行為/義務の衝突/何が適法的な行為であるか/迫害されている者たち/道徳性と世間のしがらみ/漱石は道徳的である/息子を殺さねばならない
第五章 意志の自律と悪への自由
意志の自律と他律/ 「文字」と「精神」/自己愛以外の意志の他律/アブラハム/私は貝になりたい/ 「文字」が「精神」を獲得するとき/アイヒマン/私が誤っていないという保証はどこにもない/堕胎について、プランテラの場合/良心の法廷/ウィーンでの出来事/悪への自由
第六章 文化の悪徳
意志(wille)と意思(willkuhr)/動物と悪魔とのあいだ/悪の場所/動物性の素質と人間性の素質/実践理性と人類の発展史/悪への性癖
第七章 根 本 悪
人間心情の悪性/悪性の格律を選択する性癖/道徳秩序の転倒/根本悪はあらゆる格律の根拠を腐らせる/出口なし/課せられているが答えることができない問い/ふたたびプランテラの場合/根本悪と最高善
あとがき
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i-miya
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