岩波新書<br> 悪について

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岩波新書
悪について

  • 著者名:中島義道
  • 価格 ¥858(本体¥780)
  • 岩波書店(2017/03発売)
  • ポイント 7pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784004309352

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内容説明

残虐な事件が起こるたび,その〈悪〉をめぐる評論が喧しい.しかし,〈悪〉を指弾する人々自身は,〈悪〉とはまったく無縁なのだろうか.そもそも人間にとって〈悪〉とは何であるのか.人間の欲望をとことん見据え,この問題に取り組んだのがカントだった.本書では,さまざまな文学作品,宗教書などの事例を引きつつ,カントの倫理学を〈悪〉の側面から読み解く.

目次

目  次
   はじめに

 第一章 「道徳的善さ」とは何か
   ラスコーリニコフ/思索によってではなく行為によってはじめて道徳的世界が開かれる/道徳的センス/善意志/ 「義務に適った行為」と「義務からの行為」/道徳法則と定言命法/格律と性格/命法と行為とのあいだ/目的としての人間性/形式としての悪/肥沃な低地
 第二章 自 己 愛
   誰も自己愛の引力圏から抜け出すことはできない/ 「うぬぼれ」というもの/自己愛と定言命法/自殺について/より完全になろうとする義務/社会的功績は負い目である/賢さの原理/世間的な賢さと私的な賢さ/道徳的善さと純粋さ/善を求めると悪に陥るという構造/幸福の追求/幸福を受けるに値する/苦行の否定/他人に同情すべきか/自己犠牲的行為
 第三章 嘘
   適法的行為を器用にこなす人々/道徳法則に対する尊敬/真実性の原則/真実性と友の生命/窮余の嘘/愛と嘘
 第四章 この世の掟との闘争
   適法的行為と非適法的行為/義務の衝突/何が適法的な行為であるか/迫害されている者たち/道徳性と世間のしがらみ/漱石は道徳的である/息子を殺さねばならない
 第五章 意志の自律と悪への自由
   意志の自律と他律/ 「文字」と「精神」/自己愛以外の意志の他律/アブラハム/私は貝になりたい/ 「文字」が「精神」を獲得するとき/アイヒマン/私が誤っていないという保証はどこにもない/堕胎について、プランテラの場合/良心の法廷/ウィーンでの出来事/悪への自由
 第六章 文化の悪徳
   意志(wille)と意思(willkuhr)/動物と悪魔とのあいだ/悪の場所/動物性の素質と人間性の素質/実践理性と人類の発展史/悪への性癖
 第七章 根 本 悪
   人間心情の悪性/悪性の格律を選択する性癖/道徳秩序の転倒/根本悪はあらゆる格律の根拠を腐らせる/出口なし/課せられているが答えることができない問い/ふたたびプランテラの場合/根本悪と最高善
   あとがき

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

i-miya

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2013.04.22(初読)中島義道著。 2013.04.22 (カバー) 残虐事件-「悪」をめぐる評論、喧しい。 「悪」を指弾する人自身の悪はどうか。 そもそも「悪」とは。 人の欲望を見据え、「悪」と取り組むカント。 カント倫理学を「悪」から読む。 (中島義道) 1946、福岡生まれ。 1977、東京大学大学院人文科学研究科修士修了、1983、ウィーン大学哲学博士。 (あとがき) 二十五年前、ウィーン、どうしよう、どうしよう、と・・・。 ベリヴェデーレ宮殿の庭園のベンチでカント『純粋理性批判』を読む。 2013/04/22

i-miya

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2013.04.29(つづき)中島義道著。 2013.04.29 ◎善意志。 カントは、善の内容、すなわち、いかなるものが善であるかを提示しようとはしない=カント倫理学の本質。 次に、その正確な意味を盛り込もう。 『人倫の形而上学の基礎づけ』(1785)以下『基礎づけ』という。 この世界は、どこであろうと、いや、この世界以外でも無制限に善とみなしうるのは、善意志以外全く考えられない。『善意志』とは、「善いことをしよう」という思い-一定の心理状態ではない。 2013/04/29

i-miya

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2013.05.10(つづき)中島義道著。 2013.05.08-2 カント、『基礎づけ』、『実践理性批判』において、定言命法を様々に定式化しているが、つまるところ次の2点である、(1)きみの意志の格律が常に、同時に普遍的立法の原理として、妥当しうるよう行為せよ、(2)きみ自身の人格における、また他の全ての人格における人間性を常に、同時に目的として使い、決して手段として使わないように行為せよ。 2013/05/10

i-miya

42
2013.04.26(つづき)中島義道著。  2013.04.24  カント倫理学にたいする拒絶反応はなくなった。  (はじめに)  幼児虐待。  あたかも自分はこういう悪とは全く無縁。  安全地帯にいるかのようである。  自分の中に悪を見ようとしない彼らは有罪である。  ここ数十年、自分自身をはじめ、誰一人として「善くはない」という鮮明な直観に支配されている。  2013/04/26

i-miya

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2013.05.06(つづき)中島義道著。 2013.05.06 ◎道徳法則と定言命法。 カントは「道徳的に善い行為」=義務からの行為の客観的妥当性を確立しようとした。 ※客観的妥当性=「自然科学の法則のように、いつでも、どこでも、どんな場合でも必然的かつ普遍的に妥当しなければならない」という意味。 カントは、ここで、「道徳法則」という名前を採用した。 ※「法則」=「必然的かつ普遍的に妥当するという性格を含意いている」からである。 2013/05/06

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