角川文庫<br> 記者たちは海に向かった 津波と放射能と福島民友新聞

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角川文庫
記者たちは海に向かった 津波と放射能と福島民友新聞

  • 著者名:門田隆将【著者】
  • 価格 ¥968(本体¥880)
  • KADOKAWA(2017/02発売)
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  • ISBN:9784041049570

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内容説明

2011年3月11日、一人の新聞記者が死んだ。福島民友新聞記者、熊田由貴生、享年24。福島県南相馬市で津波の最前線で取材をしていた熊田記者は、自分の命と引きかえに地元の人間の命を救った。その死は、仲間に衝撃を与えた。それは、ほかの記者たちも同じように津波を撮るべく海に向かい、そして、生命の危機に陥っていたからである。なかには目の前で津波に呑まれる人を救うことができなかった記者もいた。熊田記者の「死」は、生き残った記者たちに哀しみと傷痕を残した。取材の最前線でなぜ記者は、死んだのか。そして、その死は、なぜ仲間たちに負い目とトラウマを残したのか。非常用発電機のトラブルで新聞が発行できない崖っ淵に立たされ、さらには放射能汚染で支局も販売店も避難を余儀なくされた福島民友新聞を舞台に繰り広げられた新聞人たちの壮絶な闘い。「命」とは何か、「新聞」とは何か、を問う魂が震えるノンフィクション――。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

yoshida

155
あの震災から6年が過ぎた。私は震災の日は会津地方の支社に勤務し被害は皆無だった。帰宅しテレビで震災の状況を知り驚愕した。原発の状況が予断を許さない夜半に、普段は鳴らない自宅の固定電話が鳴った。本社から支社で待機せよとの指示だった。原発事故は止まらず、世界の終わりを感じた。夏になり私は福島市に異動する。近くには崩れかけた建物が多い。出張で浜通りに行き、津波の話しを聴くと信じられなかった。私は真の意味での震災の被害に遭っていない。しかし原発事故が収束していないと確信をもって言える。未来を信じて生きてゆくのだ。2017/03/12

キンモクセイ

52
1枚の写真がある。富岡町「観陽亭」の庭で撮られたものだ。後ろには一面に広がる美しく輝く蒼い海。あの津波により跡形も無く消えてしまうろうそく岩も写っている。わずか2日後には命を落としてしまった者と助かったり者の運命はもうこの時点で決まっていたのだろうか?経験したことのない揺れ。海岸近くにいた記者はバキバキと音がしたと思ったら前方から津波が見える。思わずカメラを手にするが助けられた命を見捨てることに。震える手はシャッターを押せなかった。恐怖と対面しても新聞の事を考えるのだ。彼らはヒーローじゃないが戦士だと思う2020/03/10

kana

39
あれからもう10年。これが本当にあったことだと思うことが怖くて目を逸らしていた現実にやっと向き合ってみる。その私の軟弱さ一点をとってみても、今この瞬間の現実をなんとか記録して届けたいという一心で過酷な現場に向かう記者の方々は尊い、と思いました。震災の時、被災地ど真ん中にあった福島民友の人々は何を考えどう行動したのか、一人の記者の死がどんな意味を持ったのか、緻密な取材に基づきつつ、細かな事実に加え、当時の個々の感情まで掬い上げる文章が巧みで、数ページ読むたびに、考えさせられて、読みやすいのに一気に読めない。2021/04/04

AICHAN

39
図書館本。2011年3月11日。東日本大震災とそれに伴う大津波被害と福島第一原発事故が起こったその日から、福島民友新聞の記者たちが取った行動を詳細に記録したノンフィクション。ある記者は津波の写真を撮るため海岸線近くまでクルマで行き、襲ってきた津波からかろうじて逃れた。しかしそのとき、津波に呑まれる老人と小さな子供を目撃した。「カメラなんて構えてないで助けていたら彼らは助かったはず」と後に苦しむ。ある記者は津波に呑まれて命を落とした。しかし彼らは執念で新聞を発行し続けた。記者魂の栄光と記者たちの懺悔。2018/02/09

James Hayashi

38
福島の地方新聞の記者たちの命運。この大惨事の中、家族を顧みず取材に走った。勿論著者が書き換えているが、実質新聞記者が体験した震災記、取材記なので迫力というか恐怖感が伝わってくる。現場を見ただけでなく、その心労は彼らが生涯背負っていくもの。彼らの記者魂に涙を止めることができなかった。2018/12/01

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