岩波新書<br> 鳥獣害動物たちと,どう向きあうか

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岩波新書
鳥獣害動物たちと,どう向きあうか

  • 著者名:祖田修
  • 価格 ¥902(本体¥820)
  • 岩波書店(2017/01発売)
  • GW前半スタート!Kinoppy 電子書籍・電子洋書 全点ポイント30倍キャンペーン(~4/29)
  • ポイント 240pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784004316183

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内容説明

クマ,シカ,サルなどによる鳥獣害が急増している.田畑を荒らして経済的な損失を与え,時には人を襲うことも.近年は都市部にも現れる.なぜ増えたのか.各地の対策は.農業経済の研究者が,自ら田畑を耕すなかで考察する.

目次

目  次
   はじめに

 第1章 田園回帰のなかの鳥獣たち──害獣化する野生
  1 愛しい鳥獣たち
  2 憎らしい鳥獣たち

 第2章 街なかを闊歩する野生鳥獣
  1 神戸市街を行くイノシシたち
  2 クマの出没と人身被害──ヒグマとツキノワグマ
  3 鉄道運行を妨げるシカやイノシシ

 第3章 農村に跳梁する野生
  1 拡大する鳥獣害
  2 「害獣の価値」論の登場

 第4章 鳥獣との闘いと苦悩──全国初の捕獲補助金交付の町
  1 モデル農業が獣害により破綻
  2 サル、イノシシとの対決

 第5章 人と動物の共存への模索──各地域での実践
  1 鳥獣害対策から村づくりへ──岐阜県宮地地区
  2 サルの行動様式の調査と対応──滋賀県湖北地域
  3 エゾシカの急増と、共存への模索──北海道網走地域
  4 鳥獣害への国の政策

 第6章 人は動物たちと、どう向きあってきたか
  1 動物は人間のためにある──西洋の鳥獣観
  2 人も動植物もみな同じ──東洋と日本の鳥獣観
  3 植物をどう位置づけるか

 第7章 庶民の食の変容と動物たち
  1 庶民の暮らしと動物たち──近世「農書」にみる
  2 飢饉の歴史と様相
  3 飢餓と殺生戒のはざま
  4 「米と魚」から「パンと肉」の国へ

 第8章 新たな動物観への展望
  1 もう一つの肉食としてのジビエ利用
  2 東西の動物観の展開過程と統合
  3 新たな動物観への原点

 第9章 人と動物、共存の場所──形成均衡の世界へ
  1 二つの自然像に学ぶ──動物どうしの関係
  2 形成均衡の場所へ──人間と動物の関係
  3 保護・管理の方向と限界
  4 「人間と動物」から「人間と自然」へ──共棲の場所は守れるか
   主要参考文献

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

壱萬弐仟縁

51
著者からは1997年度、農業簿記の研修会でお世話になった記憶がある。京大教授を退いてからは、中山間で畑仕事を始めたという。空き家も多い。S字カーブの連続と、必ずしも交通ルートは便利とは言えない。生活三分法:畑仕事-囲碁などの趣味-研究。半住民:夏場週2~3日、冬場週1日滞在で(6-7頁)。農業経済学者として身をもって体験したこと:鳥獣拡大、農業者高齢化、少量多品目生産で直売所急増した理由。一般の半値で多めに変えることから(19頁)。生活者目線の重要さ。2016/11/22

はじめさん

16
昨今街場にすら出没するようになった猪な鹿、里山を荒らす猿によって引き起こされる鳥獣害について描かれる。食べ物が足りなくて出てくるは間違い。森林飽和により、個体数は増えている。西洋で提唱された、動物の権利(感情があるので、恐怖を与えずに殺す事や、飼育する時は広いスペースで)や、仏教によってもたらされた殺生戒もまた、日本人が狩猟から農耕にシフトした一因であるなど、精神面での記述が多かった印象。/ 島根県瑞穂町が日本初の捕殺助成を行った。一頭につき3万。ちらっとさぬき市豊田地区の取り組みも紹介。(H28/2392016/09/10

roatsu

12
日本各地の野生動物による主に農業への被害について、自身の中山間地域における耕作経験と各種データを交えて提示する前半部分には改めて驚かされる。その後は洋の東西で人類が、そして日本人が古来より有し変遷させてきた動物・自然観の整理に始まり、今日の環境問題を踏まえて今後有すべき価値観を模索する深い考察。深刻な被害に苦しむ生産者とその先にある我々の食卓を考えれば早急な対処は必須だが、性急な判断の前に日本人が自然と向き合う際に自ずと抱く感情や思想はどう形成されてきたか、長い時間軸から捉え直すこともまた重要と感じる。2016/09/13

ふたば@気合いは、心を込めて準備中

7
農家と鳥獣との攻防から、環境破壊の現状にいたるまで、仔細に意見が提供されている。人間は、あまりに強大になりすぎた。もはや三丁目の夕日のあの時代に戻ることはできない。人間は、地球を破壊し、多くの生き物を絶滅させ、また危機にさらしたその反省をもって、環境を保全する義務を負う。これ以上の破壊を自ら律して、せめて現状を維持することを考えねばならない状態にある。それも、不可能に近い。問題は鳥獣害ではない。人害が問題なのである。2018/12/24

yamakujira

7
市街地のイノシシや、線路に侵入するシカも困るけれど、なにより中山間部での激しい鳥獣害が痛ましい。耕作放棄が増えているのは鳥獣害だけが理由じゃないとしても、田畑を害されて挫ける気持ちが悲しいね。対策としては緩衝地帯の設置がもっとも有効に見えるものの、費用面だけじゃなくて地形的な制約もあるんだろうな。そんな現状の解決策を期待していたら、後半は西洋と東洋の動物観の違いとか観念的な話になった。ダーウィンの自然淘汰論と今西錦司の環境適応論の対比など興味深いけれど、もっと現実的な提言が欲しかったな。 (★★★☆☆)2018/02/20

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