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内容説明
スピノザの思想史的評価については多くのことが言われてきた。デカルト主義との関係、ユダヤ的伝統との関係。国家論におけるホッブズとの関係。初期啓蒙主義におけるスピノザの位置。ドイツ観念論とスピノザ。現代では、アルチュセール、ドゥルーズ、ネグリ、レヴィナスといった名前がスピノザの名とともに語られる。スピノザはいたるところにいる。が、すべては微妙だ。――<本書より>
目次
はじめに
1 企て
2 真理
3 神あるいは自然
4 人間
5 倫理
6 永遠
あとがき
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
harass
64
17世紀のオランダのスピノザが唱えるものは、少し前に読んだアドラーを連想する。世界とは幸福であるとはどういうことかを厳密で個性的なアイデアで突き詰めていく、スピノザの著作を丹念に解説してある新書。唸りながら読む。先に読んだ「超人の倫理」から手に入りやすいこの本を選んで間違いはなかったようだ。しかしこの異質極まりない考えなのだが、ある種の啓示のような凄みを覚えるのはなんだろうか。敬虔なカトリック作家たちの作品を読む時にも同じものを感じる。揺るがない知性と極限の誠実さがそれらの要因なのだろうか。2017/04/26
おたま
46
『知性改善論』から『エチカ』へとその内容の主要な部分を辿ることによって、スビノザの思想の核心へと連れていってくれる。これまでも國分巧一朗や吉田量彦のスピノザ思想の解説書を読んできたが、やはり『エチカ』の内容は難しいものだった。この本はこれまで読んできた中では最も分かりやすいものだと思う。それによって、逆説的かもしれないが、スピノザの思想の異彩さがくっきりと浮かび上がる。「神とは自然」という考えの、その行き着く果てまでも、上野修は噛み砕いて辿っていき、それによって私たちの常識的な自己・世界観は突き崩される。2023/05/01
ころこ
37
神=自然というのが、日本的アニミズムと相性が良いスピノザですが、主体の問題の処理として読み替えることが出来そうです。私の精神の思考形態であるデカルトは、主観的な思いがどうして思考の外にあるものと一致できるのかという問題を残してします。他方、スピノザは、精神がなくてもただ端的に考えがある、観念があるとします。何かを生じさせる能力とその何かを知る神の能力とは、厳密に同等で並行しており、一方が他方に先立つということがないとすれば、神=自然が成り立ちます。さらに、人間の精神は、身体の観念あるいは認識だとなります。2018/06/21
井月 奎(いづき けい)
34
俗物の私(俗物オブジイヤーがあったら受賞間違いありません)は現世での幸せも味わいたいですし、死後も生きたいのです。死後は死んでから考えればいいでしょうから現世のために『エチカ』を読もうと思いいたりました。難解との評判高い『エチカ』ですので新書で事前情報を、と思いましたがこれまた難解でした。まあでも、その中からくみ取れたことだけでも「スピノザすげえ」と相成りました。般若心経を思い出すところもありますが、絶対的な個を尊重するところにこの哲学の巨人の独自性と希望を感じました。さて、『エチカ』行きましょうかね。2024/03/17
chanvesa
26
スピノザについて何にも知識がないが、何とも読みにくそうな数式混じりの『エチカ』をいつか読もうと本書を手に取る。入門書を読んでしまうとその解釈が刷り込まれてしまうので注意しなくてはいけない。でも「ゆるしは一つの効果であって、意志でもって人を愛したりゆるしたりできるものではない」(148頁)のような、生きることについての哲学を鮮やかに見せられると、スピノザにますます興味を持ってきた。2014/10/26