内容説明
“希望の裏打ちのない若者の行為があり得ようか”過去・現在・情念・観念の行きかう193X年冬の新潟。鋭利、俊敏な安吾が、全青春を賭けて敢闘した力作――後の“安吾”を生んだ“夢と混沌”の巨大な“坩堝”。同時代の批評に埋没させられていた秀作『吹雪物語』。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
sabosashi
7
ストーリーはある。 人物も多彩でそれぞれに魅力はあるが、それにしても奇妙さがつきまとう。 さて奇妙さに伴われても、これだけの長さの物語になると著者はどれだけ闘わなければならないか。 それを思うと、安易に批判めいたことを口にするのが後ろめたくなる。 すくなくとも、インチキの世界ではないが、わたしたちのいま棲んでいる世界とはだいぶかけ離れていそうだ。 ときに「充ち足ることは時にいささか醜悪である」なんてことばが出てくる。 そんなものだろうか。 2016/09/05
amanon
1
恐らく著者は意欲作たらしめんと執筆にかかったのにも拘わらず、意欲が空回りしてしまったのではないか?そんな印象が拭えなかった。解説でも指摘されているように、散漫なストーリー展開、女性の会話文がいわゆる女言葉で統一されていないなどの不備、そして何より著者特有のユーモラスな要素が皆無というのが致命的。著者の取り組み方、あるいは優秀な編集者の損愛でもっと違うでき…例えば漱石の幾つかの作品に肉薄するくらいの作品になりえたのではないか?ついそんな気にさせられてしまう。一言で言えば、多くの可能性を秘めた失敗作…?2013/01/24