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内容説明
20世紀文学の巨人ボルヘスによる知的刺激に満ちた文学入門.誰もが知っている古今東西の名著・名作を例にあげ,物語の起源,メタファーの使われ方の歴史と実際,そして詩の翻訳についてなど,フィクションの本質をめぐる議論を分かりやすい言葉で展開する.ハーヴァード大学チャールズ・エリオット・ノートン詩学講義(1967-68)の全記録.
目次
目 次
1 詩という謎
2 隠 喩
3 物 語 り
4 言葉の調べと翻訳
5 思考と詩
6 詩人の信条
気紛れな芸術のあれこれカリン=アンドレイ・ミハイレスク
訳者あとがき
編 者 注
訳 注
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
lily
137
ショーペンハウアーを称賛する作家につまらない作家はいない。小説の本質は人間の崩壊、人物の堕落にあると言い、自分が読んだものの方が自分で書いたものよりも遥かに重要であると信じていると言い切ることにどれだけ勇気を与えられたか。今日も私はいかなる苦しみも不安も感じることなく悦びを求めることだけに集中し全身でただただ感じる読書をしている。2019/08/04
新地学@児童書病発動中
116
ボルヘスのハーヴァード大学での講義をまとめた本。「小説は完全に袋小路に入っている」というボルヘスの考え方が印象に残った。ジョイスのような実験的な小説よりも、叙事詩的な内容を持つ物語を良しとするボルヘスは、ダンテのような叙事詩を語る詩人の末裔なのだろう。一番印象に残ったのは、ボルヘスが本を読む喜びについて語っていることだった。読者の悦びは作者の悦びより大きいそうだ。ボルヘスは文学者である前に一人の本好きの人間なのだと思った。本を読む喜びがボルヘスの作家としての原点なのだろう。2014/08/25
nobi
84
この講演集も、読むというより彼の生の声を聴いている感じ。本を読むこともメモを見ることもできない彼が、古今東西の詩を次々と繰り出してくる記憶力、連想力に改めて驚嘆してしまう。ただ少なくとも私は、これを読んで詩を感得できる訳ではない。ミルトンの詩の一節を比較して、こちらは死んでいるこれは生き生きしていると言われてもついて行けない。それでも彼の詩に対する言葉に対する熱い思いは波動のように伝わってくる。音と韻律、そしておそらくその誕生の次元にまで遡っての言語化という行為の結果が、私達の周りの世界を蘇らせてくれる。2020/10/03
syaori
61
ボルヘスによる詩についての6回にわたる講演。「詩という謎」から始まって「隠喩」「物語り」と続きます。彼が語るのは、詩とはいかに美しい謎であるかということ。そしてそれを読む時、一つの言葉の意味に「こだわる必要は」なく、その謎を、そこにある美を享受することが大切だということ。また様々なものより刺激された詩人の心を読者である私たちが感得することで、作者の織り上げた言葉が私たちの心に響くことで詩は一層豊かなものになるのだということ。全体に作者の詩への、美への信頼が溢れていて、心に豊かなものが満ちてくるようでした。2019/11/04
zirou1984
47
『7つの夜』もそうだったのだけど、ボルヘスの講演録は読んでいてものすごく心地良い。それは彼の書物に対する愛情、文化に対する敬意を言葉の端々から感じることができ、博覧強記なその知性が軽やかなステップを踏んで読み手を魅力するからだ。一言で表すならば、それは信愛なる美しさ。物語について、詩についての講演録である本作ではそんなボルヘスの美学が満遍なく語られながら、書物を超えた「言葉」が持つ美しさへとアクセスする。ボルヘスが盲目となりながらも書物へ、そして美しさへの敬意を失わなかった理由に触れることのできる一冊。2013/09/28