岩波新書<br> 新しい幸福論

個数:1
紙書籍版価格
¥902
  • 電子書籍
  • Reader

岩波新書
新しい幸福論

  • 著者名:橘木俊詔
  • 価格 ¥902(本体¥820)
  • 岩波書店(2016/09発売)
  • ポイント 8pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784004316053

ファイル: /

内容説明

ますます深刻化する経済格差.なぜ日本では格差がなくならないのか.税制度の問題点などを分析し,経済学が抱えている課題も明らかにする.そして社会制度の様々な改革とともに,いままでとは異なる生き方をも提言.

目次

目  次
   はしがき

 第1章 ますます深刻化する格差社会
  1 お金持ちの所得が高くなっている
   日本のお金持ち/高くなるお金持ちの所得額と資産額/プロスポーツ選手や芸能人の所得/なぜこれほどまでに高額所得者の所得が上昇したのか
  2 日本の過去、そして外国との比較
   過去の日本のお金持ち/戦前の高額所得者の姿/戦後の改革
  3 日本の貧困層
   貧困者の増加/高齢者と単身者、そして女性/貧困者の多い理由/貧困を生む社会的背景
  4 機会不平等
   結果の格差と機会の格差/機会の平等/日本における不平等
 第2章 格差を是正することは可能か
  1 世界でもっとも幸せな国
   世界における幸福度/デンマークの幸福度が高い理由/日本の幸福度
  2 格差是正は、なぜ進まないのか
   格差是正策の現状/弱い再分配政策
  3 日本では、なぜ平等が好まれないのか
   人間の心理/格差と心理/格差を是認しているのか/ 「博愛心」/モラルハザードへの過剰な嫌悪感/哲学はリバタリアニズム、経済は市場原理主義<BR> 第3章 脱成長経済への道<BR>  1 経済学における成長と脱成長の葛藤<BR>   古典派経済学以前の経済成長/スミスの道徳哲学/古典派経済学/定常状態/成長経済学への道/経済成長が、なぜ望まれるか<BR>  2 成長経済の弊害<BR>    「定常状態」の再現/大量消費批判/環境問題の深刻さ/産業主義の衰退と金融資本主義の矛盾/日本における弊害<BR>  3 脱成長路線への政策<BR>   脱成長路線の倫理観/教育・訓練の重視<BR>  4 格差と経済成長<BR>   経済成長論者の主張/格差拡大は経済成長にマイナス効果/経済成長は格差を縮小するか/格差と経済成長の国際比較<BR> 第4章 心豊かで幸せな生活とは<BR>  1 食べるためには働くべきであるが、それがすべてではない<BR>   生きるために働く/働くことは苦しいことだ/ 「働くことに意義はない」/アーレントとメーダ<BR>  2 家 族<BR>   家族と日本人/家族の絆の崩壊説との矛盾?/家族といっしょにいる時間/家族にトラブルが起きたとき<BR>  3 自由な時間<BR>   日本人の労働時間/余暇を何に、どう配分するか<BR> 第5章 いま、何をすべきか<BR>   若い世代/高齢者/女性/中央と地方の格差/東京一極集中をやめる<BR> おわりに──私が思うこと<BR>   他人との比較をしない/多くを、そして高くを望まない/できれば「家族」とともに/何か一つ打ち込めることを/信仰をもつことはいいことではあるが/他人を支援することに生きがいを/他の人の幸せ<BR>   あとがき<BR>   主要参考文献<BR>

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

5 よういち

97
トマ・ピケティが著書『21世紀の資本』の中で、先進国での格差拡大を懸念して久しいが、日本でも格差が拡大し始めた。格差拡大は限られた富裕層に貧困層という二極化を生む。そして日本は資本主義国の中でも有数の貧困国家となっているのだ。◆働くことの意義を説くことが多い日本であるが、そこには疲れが見え隠れする。働くことに意義はないという思想もある。労働以外のものに、自己実現を求めるのは自然なことだとも。労働時間を短くし、余暇時間を長くして人間性の高い生活が好ましいとの主張◆分かるが微妙だなぁ。2020/03/03

壱萬弐仟縁

36
従来の幸福論は哲学、社会学、心理学、文学中心。本書の特色は、経済的な豊かさと幸福度の関係を分析した経済学の視点を加味している(ⅱ頁)。金持ちの富裕度の高さを示す指標は、所得額よりも資産額のほうが明確とのこと(8頁)。資産額とは現有の土地、住宅、株式、債券、家具、装飾品、自動車などの資産を現在価格で評価したもの(9頁)。戦前日本は超格差社会(超不平等社会)だったという(21頁)。データの信頼性からすると、定義が各国共通の相対的貧困率が絶対的貧困率よりも信頼性は高い(28頁)。2017/03/16

ゆう。

21
日本の現状を近代経済学の立場から分析し、格差社会の拡がりを指摘していいます。この分析自体はとても重要だと思いました。ただこうした格差社会のなかでどうすれば人々が幸福を感じることができるのかという問題提起は、基本的に観念論的であり、経済学的に分析したものとどのように関連しているのか分かりづらかったです。2016/07/15

16
失礼ながら、著者の年齢、経歴から「高齢者向け説教エッセイ」かも、と邪推してしまった。しかし、実際は淡々とした筆致の中に温かさを感じる、次世代への提言だった。楽観論も多く、エッジが効いているとも言えないので物足りない人もいるだろうが、社会学や経済学をかじり始めた学生への「入門書」には適していると思う▼2013年の時点で、最も幸福度の高い国トップ3はデンマーク、スイス、アイスランド。W杯やEUROでの素朴な盛り上がりを見ると、確かにアイスランドの人々は幸せそうだ。2018/07/19

Francis

14
格差論を論じてきた橘木先生の幸福論の集大成。簡単にまとめると人口減少社会となった日本では経済成長は難しく、かりに経済成長を目指すとしたところで経済格差が広がるだけ、むしろ無理な経済成長を志向せずに格差是正に努め、ドイツ型の中福祉中負担政策を取り、教育の充実に努めよ、と言うこと。そんな難しいことではないのだが、意外と実行するのは難しそう。でもこれが一番日本国民の支持を得られそうな気がするし、世界にとっても良いことだと思う。最後の章に出てくる著者の労働観も大いに共感できるものだった。2016/08/21

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/10963036
  • ご注意事項