内容説明
大学在籍中にコンピュータのインタプリタを作製、休学してソフトウェア会社を創業、1980年代にコンピュータ業界で不動の地位を築いた、IT史上の伝説的存在ウィリアム・ベック。会長職を譲り、第一線から退いたウィリアムは現在、財団による慈善事業に専念している。探偵兼ライタの頸城悦夫は、葉山書房の編集者兼女優の水谷優衣から、ウィリアムの自伝を書く仕事を依頼され、日本の避暑地にある彼の豪華な別荘に一週間、滞在することになった。そこにはウィリアムだけでなく、その家族や知人、従業員などが滞在していた。ところが、頸城が別荘に着いた後、思いもかけない事件が発生する。警察による捜査が始まるが、なかなか手がかりをつかむことができない。そんな中、さらなる悲劇が……。取材のために訪れた頸城は、ウィリアムの自伝執筆の傍ら、この不可思議な殺人事件にも関わることになる。果たして、事件は解決できるのか。忘れ得ぬ苦しい記憶を背負った探偵が、事件の謎・愛の影を探求・逍遥する、至高の長編小説。待望の書き下ろし長編ミステリー。
目次
プロローグ
第1章 不在・羨望・さらに思議
第2章 関係・記録・さらに意味
第3章 破綻・混乱・さらに虚無
第4章 発想・消滅・さらに不意
エピローグ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kishikan
89
「ゾラ・一撃・さようなら」の続編というか3単語シリーズ2作目にあたる私立探偵が主役のハードボイルドミステリ。森さんの私立探偵ものといえば、Vシリーズの保呂草、瀬在丸コンビを思い出すが、本策では探偵頸城と編集者兼女優の水谷優衣がコンビ。他にも2人から言い寄られるモテモテぶり。話術が軽妙で面白く、少し抜けた感じもするのだが、頭脳明晰でクールな一面も・・・。モテモテなんだから良い男なのかもしれない。日本(おそらく軽井沢)が舞台だけど、ヨーロッパの香りがする。森さんらしい謎解きになっていて、ファンとしては大満足。2015/04/16
chiru
86
次女に借りた本❁ センスとユーモアが粋な会話と、意味付けされたセンテンスを味わえる作品。 たとえば『幸せというのは転んだあとに立ち上がって、ああ、怪我がなくて良かった、とほっとするときに感じるもの』とか『僕が足を退けないかぎり、誰もその地面を見ることはできない。それが、人間の立場っていうやつなんだ』とか。。。軽めの主人公が、ときどき本質をつく真面目なセリフをいうのが醍醐味。 IT長者をめぐる殺人事件のさりげない伏線回収、シンプルで調和のとれた密室トリックも大満足。 ★4 2018/09/03
@
73
ゾラシリーズ第二作目。(といって差支えないだろうか…。)ともあれ、ゾラに引き続き頸城くんが主役となるお話。ハードボイルドと書いてあるけれど、果たしてそれは合っているだろうか。どちらかというと、魅力的なのにちょっと残念でつい応援したくなるような彼。女性なら、こんな男性ほっとけないだろうなぁ。森さんの作品の中で「ツイッタに書くと炎上するよ。」なんて台詞が出るなんて、時間の流れを感じた。表紙のように暗闇の中でぼんやりと現れるような、現実味のないお洒落さ。でもそこがいい。素敵な映画を1本見たような読後感でした。2015/05/08
ひめありす@灯れ松明の火
64
装丁がデジタルハードボイルドっぽい感じで格好いい。紙も珍しい良いのを使ってて贅沢な気分です。ちょっと頁を繰りにくいのが難点ですが。章ごとの引用がサガンなのも、ひと夏の出来事っぽさに拍車をかけている。本当に憐れで可笑しかったあの夏を。何となく語感が「ゾラ・一撃・さようなら」っぽいなあと思いながら読んでいたら、本当に続編なのだとか。あれはいい恋愛小説でしたな。等と思いつつ而して最初に思ったのは『森博嗣がスティーブ・ジョブスを描いたら』でした。相変わらずどこかリアリティがなくて、何もかも表をすうすうと滑っていく2016/02/26
ソラ
50
他の方の感想読んで初めてゾラ・一撃・さようならの続編だと知った。タイトル見たらその通りなんだけどな…。さらさらとした印象で特に引っかかるところもなくすらっと読めたかなぁというところ。2015/03/08