内容説明
昭和天皇の生誕から死去までを年代順に記述した「昭和天皇実録」.その細部を丁寧に読みこむと,これまで見えてこなかった「お濠の内側」における天皇の生活様態が明らかになってくる.祭祀への姿勢,母との確執,戦争責任と退位問題,キリスト教への接近……天皇と「神」との関係に注目し昭和史・昭和天皇像を刷新する.
目次
目 次
序 論 「神」と「人間」の間─何がよみとれるのか─
第1講 幼少期の家庭環境─明治時代─
第2講 「和風」と「洋風」のはざまで─大正時代─
第3講 実母との確執─昭和戦前・戦中期─
第4講 退位か改宗か─占領期─
第5講 象徴天皇制の定着─独立回復期─
あとがき
表 太平洋戦争期における天皇の映画鑑賞一覧
宮城・皇居図
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
93
昭和天皇実録が公開されたことに伴って、その内容や全体像などをまとめておられます。私も現在4冊公刊されている実録を徐々に読んでいるのですがこの本を先に読むことによって理解が少しは深まりそうな気がします。全19冊になる本を先に読まれている方が新書などでいくつか出されていますが、この原さんの本が一番わかりやすそうな気がします。最後に太平洋戦争中に陛下がみられた映画の一覧が出ているのが参考になります。2015/10/17
あすなろ
88
【学習】天皇実録を貫読する時間はとてもなく、この岩波新書でさらいたく読了。女性の中で育った環境・一妻制の確立・皇太后との確執・宗教観・天皇の皇太后化・戦争との在り方・革命への怖れ等々、非常に興味深い一冊となった。激動の時代昭和の天皇の場面場面、即ち点と点が少しそれぞれ結ばれた観がある。長年持ってきた知的好奇心が少し満たされた一冊。2016/06/26
おさむ
47
敬愛する歴史学者・磯田道史さんが新聞で勧めていたので読了。実母・貞明皇太后との長い確執、原爆投下直前のある事実への反省、カトリック改宗の動き、娘たちに度重なった不幸……。なるほど天皇関連史の大家になりつつある原さんらしいトリビア溢れる解読書でした。実録には都合よく直された「ウソ」があるといった負の側面もしっかり描いており、好感が持てます。2015/10/17
樋口佳之
30
天皇制というのは、単なるシステムではありません。独特の身体や肉声を持った生身の人間がしばしば姿を現し、その生涯が元号という時間を規定している以上、旧憲法下であろうが戦後憲法下であろうが、天皇という存在を憲法という枠組みに完全に封じ込めることはきわめて困難/キリスト教への改宗云々の話で、皇室にとっての宮中祭祀、宗教上の意味ってどれ程のものなのだろうかという疑問が。形式として淡々と引き継いでいるだけなのだろうか。2018/10/29
kochi
25
流石に全61巻の『実録』本体を読むのはしんどいので(だいいち、買ったら寝るところもなくなるf^_^;)、やはり、専門家の咀嚼したものはないかと、手に取ったもの。以下、雑感。「天皇制にとり神道における祭祀が重要なこと」、「欧州も訪問し、近代的な考え方も理解する天皇と母親、貞明皇后との確執の対象が、「講和か徹底抗戦か?」とは、スケールがでかいなぁ」、「終戦時から講和までの間退位やカトリックへの改宗(!)などを、昭和天皇が考えていたとは」などなど。昭和とはまさに激動の時代であつたものだと改めて。2015/10/16