内容説明
左遷寸前の西前は、上司・藤山の愛人の子の中絶を任されて以来、藤山と固い主従関係を結ぶ。不良債権の隠蔽、責任の押しつけによるライバルの追い落とし、官僚への接待漬けでの情報収集などで、二人は行内の熾烈な出世争いを勝ち上がっていくのだが――。バブル前夜から銀行大合併までの金融界の内幕を生々しく描いた金融エンターテインメント。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
W-G
266
緊迫した内幕描写などで読ませることは読ませるが、長い割にはイマイチ主旨がはっきりしない類いの本。過去と現在を並行させる構成自体はともかく、過去章を一人称にした意図がよくわからず、効果的とも感じなかった。後半からは現在章に時間が追いつき、時系列が認識しづらい。また主人公の人物造形が中途半端で、善人にも悪人にも振りきれない小物感が強くて感情移入に困る。金友に五藤といった脇を固める人物も、物語の中で何を担わせたかったのかが不明瞭。散々やりつくされている題材なだけに、一定以上は楽しめるが、粗があると非常に目立つ。2021/10/15
Ken Zucca
7
江上剛さんの最も得意な分野が題材。何とも得体の知れない巨大組織の中で、これまた得体の知れない人たちが解けない糸のように絡み合う。個人的には絶対に関わりたくないこのような世界が、本当にあるのだろうか。2016/12/10
みやこ
6
本が分厚い!!重い!銀行についての生々しい描写は相変わらずさすがです。ただ最後がなあ…そんな偶然あり?って感じだし。ちょっとご都合主義だったかな。2015/12/19
へいがぁ
5
過去と(主人公の主観的)現在を交互に描くという手法があまり功を奏していたとは思えませんでした。主人公にも共感できませんでした。読み物としてはそこそこ楽しめましたが、コストパフォーマンスはあまり良くなかったです。2015/11/03
Yoichi Taguchi
4
さすがに元銀行マン・江上氏が書いただけあって、銀行の裏側が良くわかる。2つの時間軸を平行して展開する書き方も良かった。かなり長い小説だが、この時間軸を行き来する方法で飽きずに読めた(読まされた)。物語は終章でドラスティックに展開するが、この終わり方で良かったと思う。それにしても、五藤って何者だったんだ。2017/06/24