内容説明
これほど盛んに研究されながら,脳科学は進むべき方向を見失っている.脳のさまざまな側面について蓄積された詳細かつ膨大な知見を統合する大きな枠組みが存在しないからだ.本書はその枠組みとして「予想脳」という概念仮説を導入し,多数の脳が相互に影響を及ぼしあっているという事実をもとに,脳の本質的な理解に迫る.
目次
目 次
はじめに
1 脳は何をしているのか
2 ヒトの脳に特別なこと
3 予 想 脳
4 従来の解釈と予想脳による解釈
5 予想脳を実感する
6 予想脳の発達
7 予想脳と社会
おわりに
参照文献
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
calaf
9
個別の細胞や組織からではなく、予想と現実のそことの間の誤差を元に脳が働いているという予想脳という仮説。そこでは特に、一個人の脳内の様々な部分の統合のみならず、他人との関係という社会の多数の人々の脳との間のネットワークによる影響も考慮に入れたものである事が重要。。。という感じの話かな?結構面白い考え方。なるほど...2013/08/15
Junya Akiba
4
未来に関する予想については今まであまり知らなかったが、本書では「予想脳」という概念でそれを説明する。それは、抽象化された環境情報のセット「テンプレート」と過去の経験に基づく将来起きうる事象の確率的表現「オブジェクト」を用いて、常に次に生ずる未来を予想し、絶えず流入して来る自動処理された環境情報と自己の予想を比較する事が脳の本質的な機能である、という考え方である。多分に現象論的な考え方だが、人工知能を議論する際には、この様なメタなフレームワークが分かり易くてよいのかも。2016/09/16
kgbu
0
2005年に出版され、その時点で実験によって確認された事象を述べているのではなく、仮説の提起をしている本なので、その後の脳科学の進歩の具合からしてどの程度本書で提起されている仮説が検証できるかと期待していた。しかし、予測脳というモデルは主に新皮質を統合する動作モデルであり、社会的な行動までをカバーする高度なもので、現時点でも簡単には棄却できない生きた仮説だと感じた。本書内でもジェフ・ホーキンスの提唱するHTMとの関連が述べられているが、今ならば深層学習系との関係も洗い直して更なる深化を期待したくなる。2017/04/19
SS
0
学問は方法論とセットで発展すべき。abductionがひつよう。obktさんは思い込みになってる?2014/04/24
Ryosuke Tanaka
0
著者は理研脳センターの先生。最初に断ってあるが統一的仮説をボンと建ててほらこれで説明できる、という組み立て方をされているので解釈論になりがちだがしょうがない。報酬予測誤差の話の復習にちょうど良かった。2013/01/01