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内容説明
海賊集団が登場するのは、いつも激動の時代である。
彼らは領域を規格化しようとする国家権力に対し、真っ向から対抗する価値観を掲げ、資本主義の影響力がもっとも薄い辺鄙な場所、いわばグレーゾーンを狙って出没する。
海賊ははたして本当に悪い存在なのか?
それとも映画や小説で描かれるようなロマンチックな存在なのか?
時に国家と結びついて互いに利用しつつ、情勢によっては突き放されてきた海賊の歴史をたどりながら、海賊活動と組織から、資本主義(とその行き詰まり)を俯瞰する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
むらきち
8
国家権力が厳密に管理しようとすればするほど、それに反発する人々が増え、海賊組織は繁栄を極める。彼らは、目的を持って組織的に行動し、効果的に利益を増大する。この「海賊という現象」は、国家の手が届かないグレーゾーンに跋扈し、国家は彼らの斬新な活動に刺激され、革新を促される。帆船時代の海賊と、現代のサイバー空間のハッカーたちや、バイオパイレーツたちは多くの共通点があり、彼らが現代の海賊として現代の国家、資本主義に刺激を与える。本当に面白い本でした。参考文献も読んでみたいと思います。2021/08/28
takizawa
3
国家と海賊の関係について論じた本というのはあまり見かけなかったので新鮮で面白かった。大航海時代の海賊とサイバーハッカー、バイオ・パイレーツに共通するのはいずれも資本主義の転換期に生じた現象であるということ。ドゥルーズ&ガタリの議論が随分参照されてはいるが、フランス現代思想の本としてしか読まないのは勿体ないかな。解説で指摘されているとおり「国家学副本」として読むと良いと思う。2014/12/30
左手爆弾
2
秩序の周辺から秩序へと影響を及ぼす「海賊組織」をテーマにしている。歴史的な海賊の話ではなく、「海賊とは何か」という本質に迫っている点で、非常に面白い。海賊組織は秩序が外れているにもかかわらず、民主的で福利厚生もしっかりした組織であった。ある種の「自生的秩序」があるのだろう。最終的に、脱領土的な資本主義は国家の解体をもたらすという可能性が掲げられているが、これはそもそも冒頭で出てくる『神の国』でアレキサンダー大王と海賊との会話を念頭に置いているのだろう。海賊と近代の資本主義、果たして何が違うのか?2015/07/08
Daimon
1
海賊とは、国家の周辺で生み出される存在であり、これまでの既存の価値観を刷新する―そしてそれゆえに国家にとっては脅威となる――存在である。実際、大航海時代には、黒人や女性を仲間に引き入れ、民主的に組織の代表を選出していた。そして、彼らは、新たなテクノロジーを生み出す存在でもある。通信技術に始まり、インターネット、DNAに至るまで、実は彼らの存在は資本主義の発展の「必要悪」として重要な役割を担っている。「海賊版」とは確かに知的財産への犯行であるが、一方で「共有」という新たな価値観を提示するものでもある。2018/12/28
渡邊利道
1
ドゥルーズ=ガタリの『資本主義と分裂症』の議論をベースに、資本主義(市場)と国家と企業のアマルガムを逸脱し更新するものとしての「海賊」をひろく論じた本。事実というか資料の厚みがあまり感じられなくて、ちょっと物足りなかったかも。2017/05/07