内容説明
命がけで作家の夫を愛した妻の壮絶な記録。
「一緒に死のうと思ったわけでもないだろうに、同じ日に寄り添うように亡くなった。幸せな夫婦だったと思います」(本文中の渡辺淳一氏の証言より)
急逝した太宰治のピンチヒッターとして急遽、新聞連載を執筆することになった船山馨は一躍売れっ子作家となるが、その激務をこなすためにヒロポンに溺れてしまう。元編集者の妻・春子もまた彼とともに中毒になり、なりふり構わず借金を重ね薬物を買い漁った。ふたりは恩人・林芙美子の死をきっかけに薬物を絶つが、馨の作家としての評価は地に墜ちる。それでも夫の復活を信じる春子は、人生の汚れ役を一手に引き受けながら家族を守るために奔走する。
昭和の時代を壮絶に生きた作家と、その妻の破天荒な人生を克明に描いたノンフィクション。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
駄目男
2
夫67歳、妻71歳、共に心不全の最期で比翼連理の夫婦だったとあるが、幸いにして晩年に書いた『石狩平野』と『お登勢』が共に好評でヒロポンとも手を切り借金を完済しての旅立ちだったようだ。 壮絶な二人の生涯だが、こんな夫婦もいるんですね。 2014/11/26
y_e_d
1
昭和のロマン作家・船山馨と妻・春子さんの生き様を綴る。太宰の死後に繰り上がった朝日新聞連載、この重圧から手を出した薬、そこからの転落と復活。自らも薬に手を出した春子さんの、夫に気付かれない尽くし方が半端でなく、現代でこんな生き様はありえるだろうか。中毒者として半ば文壇から追放された状態だった船山馨が、「石狩平野」で鮮やかな復活を遂げるまでは、短編推理小説や少年少女雑誌を細々と請け負う苦しい時期だったと思うが、その短編推理小説も「海の壁」を読んでの通りなかなか面白く、才能を信じたと言う妻の姿は良く分かる。2017/09/24
beruze3
1
凄い。逞しい。図々しい。夫の作家を支える妻の記録。彼女のエネルギーはどこから湧いてくるのだろうか。夫婦で借金、薬物(ヒロポン)まみれになりながらも立ち直り、夫を作家再起させる。借金を返済し、薬物を断ち切り、政治家の応援、夫のマネージャー、これが昭和50年代の話とは。 2015/08/13