内容説明
20代最後の2年を綴った戦後日記第4弾!
昭和26~27年。山田風太郎が20代最後にして独身生活最後の2年間を精力的に過ごした2年間を綴っている。
〈夜、成城の横溝氏たずねのんでいるうち前後不覚、気がつくと、どこともしれぬ深夜の町をフラフラ歩いていた。眼鏡消失、額にけがして血だらけ、金も消失。さかんにお巡りにトッチメられ、朝ヘトヘトになってかえる(昭和26年3月9日)〉
〈およそ日本民族の最大の弱点は科学的精神の欠如だろう。換言すれば推理力による把捉を重んじないという性向だろう。これを矯正するために探偵小説は一臂の力をかし得るはずではないか。日本の民衆に推理という精神作用がいかに興味あるものであるか、これを知らせるために探偵小説をかくという気概があってもよいではないか(昭和26年6月23日)〉
〈概していえば余は肉体でかく芸術家を軽蔑する。肉体でかく、とは肉体小説をかくという意味ではない。鈍で、ただ丈夫だけで押しまくるような作家である。小説でいえば田村泰次郎。余は頭でかく作家である。而して余は感性でかく作家には全面的に降服せざるを得ない。例えば太宰治(昭和27年5月10日)〉
終戦から6年、戦後日記の掉尾を飾るシリーズ第4弾。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
getsuki
2
戦後日記シリーズ第4弾。この翌年に結婚されるとの事で、お相手名前も出始める。男も女も批判的記述は前々からあるが、結婚相手に対するこの微妙な表現が面白い。よく食べよく飲んで、たくさん読書して……本のラインナップもまた多彩。2014/08/11
おやぶたんぐ
1
旺盛な執筆活動と遊興の日々。それでも合間合間に見せる視線は広くて鋭い。読書量も膨大…「浮喰痴陰飯袋子『麓の色』読。」…誰⁉️2022/12/10
ptyx
0
★★★☆2014/09/07
湯豆腐
0
1952年、風太郎30歳で刊行されている戦中派日記シリーズは一応完結。1942年から10年間追い続けると、風太郎本人にも周りの人々にもそれぞれに愛着が湧く。純ちゃん、菊池君、小西哲夫、吉田靖彦、高須さん、勇太郎さん、奥さん、松葉、安西、松柳、関宮の叔父、河江の伯母、江戸川乱歩、高木彬光、宮野嬢、孝子、啓子。当たり前だけれど、人ひとり十年も生きると色んな人と関係する。文脈のない日記だからこそ、その積み重ねがしみじみと感じられる。2022/08/03