内容説明
「一億総懺悔」を説いた宮さま宰相は、いかなる人だったのか――。
太平洋戦争を終戦に導いた鈴木貫太郎の次の内閣を引き受けたのが誰か、ご記憶でしょうか。わずか50日間ですが、重責を担ったのが皇族の東久邇宮でした。日米開戦直前の昭和16年秋、総辞職した近衛内閣のあと、東條英機の対抗馬と目されたのも実はこの宮さま。日本の危機に「切り札」として期待された宮さまの実像は、しかしあまり伝えられていません。著者の浅見さんが新史料を駆使して明かすのは、波乱万丈の生涯、痛快無比の個性、勝手放題の実力者ぶり。臣籍降下騒動、女性問題、右翼との危険な関係などなど、興味津々の破天荒人生が初公開されます。
目次
生母と「弟」
やんちゃな少年
東久邇宮家新立
フランス滞在七年間
不毛な闘い
臣籍降下騒ぎ
側近たちの運命
昭和の動乱の中で
怪しい交際と大陸出征
幻の総理大臣
戦時下の防衛総司令官
五十日間の内閣総理大臣
享年百二
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ステビア
14
わがままで思慮の浅い人物だったということらしい。総理大臣辞任後も数奇な人生を辿ったらしく、それを知りたかったのだが、記載がなく残念。2020/06/17
yasu41
9
昭和前史までを知りたくて読んだけどさっと走っているから期待通りではないけど、それなりに楽しめた。特別な才能があるとは思えないのに王として生まれたばかりに、周りから良くも悪くも利用されるという環境はなかなか辛いですね。2014/07/26
おっとー
5
歴代総理大臣を見てると一際目立つ名前がある。東久邇宮稔彦。終戦直後に組閣し、僅か50日間だが史上唯一の皇族総理大臣となった。さらにこの人、めっちゃ長生き(1887-1990)。もう否応なく気になるでしょ?本書は総理大臣就任までしか記されていないけど、兄弟逆転、妻子置いてフランス留学して帰国しない、右翼との交際、側近逮捕、とにかく臣籍降下したがる、ひたすらゴルフするなど、エピソードに事欠かない。こんな気ままな皇族っているんだな。あ、一応専門的見地からコメントすると、史料批判も慎重で、記述も整然としている。2017/10/04
高木正雄
4
幼少期からパリ時代、総理在任中までエピソード満載で面白い人だ。私は昔から東久邇宮と朝香宮は同じような経歴なのに東久邇宮ばかり取り沙汰されるのはなぜか気になったいたが、朝香宮は純粋な軍人ということだろうか。軍務にやる気はなかったようだが。幼少期に兄弟と上手くいかず、邦憲王ぐらいしか近しい人がいないとは悲しい。聡子妃も姉にネチネチいじめるのも酷い話だ。嘉仁親王との確執や戦後の動きについてはもう少し詳しく知りたかった。2024/08/09
sasha
4
戦前の皇族には問題のある人が多かったらしいけれど、東久邇稔彦王もその一人かな。明治天皇の皇女の嫁ぎ先として独立した宮家となったはずなのに結婚に難色を示したり、事あるごとに「皇族、辞めたい」と言い出したり、素性の怪しい人間が近寄って来たり。本書では総理大臣辞任までしか描かれていないけれど、臣籍降下後のスキャンダルの数々も王の性格に拠るところが大きいのかな。王の戦後も読んでみなたい気もする。2016/10/08