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内容説明
ネルウァからマルクス・アウレリウスまで5人の「賢帝」が続いた約100年間は、ローマ帝国の最盛期とされ、「人類が最も幸福だった時代」と呼ばれる。しかし、たとえばハドリアヌス帝は、同時代の人々には非常に憎まれた暴君だった。また、賢帝を輩出した「養子皇帝制」も、かえってそのために水面下での激しい権力闘争を生じさせていたのである。繁栄の陰の部分を描きつつ、この時代が最盛期であった理由を解明する。(講談社学術文庫)
目次
プロローグ―人類が最も幸福であった時代
第1章 訪れぬ光―五賢帝時代の始まり
第2章 最良の皇帝―トラヤヌスのローマ帝国
第3章 賢帝か暴君か―ハドリアヌスのローマ帝国
第4章 苦悩する哲学者皇帝―マルクス・アウレリウスのローマ帝国
エピローグ―最盛期のローマ帝国を支えたもの
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Nat
31
通勤の電車内で読了。内容がわかりやすくて良かったけど、新書版の方を読了していたことに気づき、ガーン。認知機能の衰えを感ずる今日この頃…。2024/02/24
鐵太郎
20
「人類が最も幸福であった時代」といわれた平和な五賢帝時代の陰にあったさまざまな闇を、さまざまな史料によって描き出した名著。順調に、と考えられていたネルウァからトラヤヌス、そしてハドリアヌスへの皇位継承が実は相当に不安定、危うかったことなど、掘り返すと怪しいことだらけ。結果オーライだった、と言うにはあまりにもできすぎのローマの平和でした。そんな、ちょっとねじれた歴史を南川さんは見事に整理してくれています。 ──ちなみにこの本は新書で15年前に読んだのですが、今回文庫版を買ってしまい、読んだら面白かった。2020/08/23
MUNEKAZ
14
五賢帝それぞれの事績を紹介するというよりは、権力確立への政治的な暗闘をメインに扱っている。帝政ローマでは有名無実化した印象のある元老院だが、この頃は依然として権威を保っており、賢帝たちも権力の正当化のために気を使っているのは興味深い。また皇帝側も自身に近い人間を元老院に送り込むなどの対策をとっており、結果として支配層における身分の流動性が高まって、カースト化を防いでいたというのも面白かった。ローマ帝国の最盛期を個人の資質に期すのではなく、それを支えた政治体制から見た一冊。2017/11/16
aisu
11
ハドリアヌスが一番印象に残った。後のヨーロッパの絶対王政などに比べると権力は約束されたものでなく、大変そう・・・2015/01/23
ジュンジュン
10
史上に名高いローマの最盛期、五賢帝の時代。舵取りを担った皇帝たちと元老院との政治史として描く。1900年も前の政治力学を分析できるとは、連綿と続くローマ史研究の蓄積を感じさせる。特にネルウァからトラヤヌスと、ハドリアヌスからアントニヌスへは、仮説とはいえ、かなりの説得力を持つ。そして、著者!わかりやすく読みやすい。2020/10/23