内容説明
戦後のGHQ占領下以降の歴史教育のためか、多くの日本人は「戦前の昭和時代は軍部が突出し、言論の自由が制限された暗黒時代だった」と思っている。食糧難で、文化も娯楽もなく、国民は暗澹たる毎日だった――という歴史観だが、それはあまりにも極端な歴史の見方ではないか。昭和4年に世界恐慌があったが、日本の工業生産高は増え、都市が発展し、大学がどんどん誕生。昭和14年まで日本国民1人当たりのGNPは増加しつづけた。昭和15年の東京オリンピックの開催決定は、軍事力で勝ち取ったわけではなく、スポーツ競技も発達した近代的な国家と認知されていたからである。「閉塞感に覆われたのは、終戦の1年半前くらいだった」と戦前を知る文化人の証言も少なくない。米国との戦争になるまでは、さほど切迫感もなく、和やかな日常は現在と変わらなかったことを、本書に収録した二百数十枚の写真は物語る。「戦前暗黒史観」を覆すビジュアル解説本。
目次
昭和十一年春場所:西横綱・武蔵の土俵入り<br/>アメリカの映画とレビューが人気を博していた<br/>日本も映画とレビューは黄金時代を迎えていた<br/>現在に至る科学の基礎は昭和十年頃に確立していた<br/>二・二六事件勃発と処罰<br/>二月二十七日、「戒厳令」が布告され東京の交通は混乱を極めた<br/>政治の分水嶺になった二・二六事件<br/>躍進する大阪<br/>スターを夢見る少女たち<br/>天才子役テンプルちゃんと日本の子供たち〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やっさん
11
横綱・武蔵山の筋肉すごい。無駄な肉がない。金剛力士像のよう/'41までアメリカ映画は公開されていた/'43まで、暮らし向きはそれほど悪かったわけではない/恋愛?もそれほど不自由ではなかった?/戦後教育で塗り固められた戦前=暗黒時代というのは必ずしも当てはまらないのだな。写真は雄弁。右側で、嫌中嫌韓な著者のコメントはなくても写真だけで伝わってくる。でも、だいぶ早い段階でゴム節約のため出勤時サンダルではなくゲタばきとか厳しいね。それにしても原節子さん、美人だね〜。どっかのアイドルのセンターが裸足で逃げ出します2017/01/30
hdo obata
9
一枚の写真は時として、言葉よりも、直感的に真実を語るものである。ただし、いつ、どこで、何を、誰が撮ったのか出典が明らかになってなければいけない。じゃないと単なるプロパガンダに成り下がる。目が覚めるような良書だ。アメリカの国際法無視の民間人に対する「大虐殺」裁かれなければいけないのは、まずアメリカである。小生の内なる戦後レジームの見直しに大いに役だってくれた。2014/10/12
√る~と
9
私の両親は戦中派。 テレビや映画で登場するような暴力教師やビンタ。 暗黒な世相では無かったと時々聞かされます。 1919年 日本、国連に「人種差別撤廃決議案」提案。 米国大統領ウイルソン拒否否決 1924年 米国、「排日移民法」(人種差別法) ・・・ 1941年 日本、真珠湾(米海軍基地)攻撃 1945年 米国、広島及長崎市へ原子爆弾使用 東京その他都市への無差別爆撃(焼夷弾) 大局的に悪。 僕は「お山の大将」は好きじゃないな。 喧嘩しなくてもよい程度に誰とでもホドホド仲良くで良い。 2014/05/30
anko
9
表紙の原節子さんの美しさときたらもう…!(*´Д`)戦前がいかに発展し素晴らしかったか。そこからの壮絶な流れに涙が止まらない。そして何よりも一次資料に勝る証拠はあるだろうか。とはいっても、歴史は真実ではなく政治というかの国々やそれに阿る売国奴にすれば、捏造プロパガンダが真実なのだから、こちらの真実ももちろん捏造しているという自己投影で終わってしまうのだろう。永遠に分かり合うことはないのだから早く断交したほうがお互いのため。金づるor侵略のために絶対しないんだろうけど2014/04/14
ぷれば
8
「戦前の日本」…明治維新以来、世界の列強国を目指し、繰返し戦争への道を突き進んでいた、と思っていた。戦前の昭和は、言論の自由もなく、暗黒な時代であったと思っていた。戦前に発行された『アサヒグラフ』とGHQ占領下に封印された「東京大焼殺」の写真資料は、あまりにも生々しく衝撃的だ。今、慰安婦誤報問題に揺れる『朝日新聞』の報道カメラマンがとらえた真実…何と皮肉なことだろうか。このような一級の報道写真を前にして、「真実」は何なのか!?自ずとわかりそうなものなのに…。2014/09/04