内容説明
大宅壮一ノンフィクション賞、講談社ノンフィクション賞ダブル受賞作! ボランティアの現場、そこは「戦場」だった――。筋ジストロフィーと闘病する鹿野靖明さんと、彼を支える学生や主婦らボランティアの日常を描いた本作には、介護・福祉をめぐる今日的問題と、現代の若者の悩みが凝縮されている。単行本版が刊行されてから10年、今も介護の現場で読み継がれる伝説の作品が増補・加筆され堂々の復活!
目次
プロローグ 今夜もシカノは眠れない
第1章 ワガママなのも私の生き方―この家は、確かに「戦場」だった
第2章 介助する学生たち―ボランティアには何があるのか1
第3章 私の障害、私の利害―「自立生活」と「障害者運動」
第4章 鎖につながれた犬じゃない―呼吸器をつけた自立生活への挑戦
第5章 人工呼吸器はわれなり―筋ジス医療と人工呼吸療法の最前線
第6章 介助する女性たち―ボランティアには何があるのか2
第7章 夜明け前の介助―人が人と生きることの喜びと悲しみ
エピローグ 燃え尽きたあとに残るもの
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しいたけ
128
鹿野さんは太陽のようだ。中心でギラギラと熱を放ち、人の目を眩ませ、惹きつける。愛されるが反発もされる。黒い焔は紅の中で際立って見える。思えば太陽とは透明なきらめきとは程遠く、何層もの色をいっときに人に浴びせかけてくる。鹿野さんのもとに集まる人々も多種多様。読み手も百面相での読書となった。私自身、学生時代は障害者のボランティアをしていたし、同級生に筋ジスの子がいた。孫が障害児で、世間に向け声を上げることがどれほど勇気のいることか実感している。そこを差っ引いても、万人を唸らせ考えさせる名ノンフィクション。2019/02/01
もりやまたけよし
124
障害者とはいえ普通の生活をしたいと言うのはよく考えてみると普通のことだと言うことだと納得できました。それと24時間介護もしくは看護のチームを半分以上ボランティアで組成すると言うのが驚きです。2021/01/01
ゆいまある
117
24時間人工呼吸器がついてる重度の身体障害者が在宅で暮らすのは容易なことではない。頻回の気管吸引という処置が必要で、それは限られた人しかやってはいけないことになっている。幼い頃から病院に閉じ込められた鹿野さんは、ボランティアを家族であると言い張り(家族なら吸引してもいい)、病院脱出を果たす。かくして常時40人延べ数百人(技術のあるボランティアは足りず、プロも入る)が彼に関わった。従来の医療は患者さんの管理を優先して時にその人の生き方を制限してきた。相手に寄り添った医療、福祉とは何だろう。読んで良かった。2020/07/08
紫綺
94
単行本にて読了。ふざけたタイトルだと思ったが、全然そうじゃなかった。筋ジスの重度障害者と多くの介助ボランティアとを赤裸々に描くドキュメンタリー。「フツウの生活って難しい。」2019/03/01
Makoto Yamamoto
85
ノンフィクションで、読みやすい文章でほぼ一気読み。 障害者も24時間介助者も聖人君子ではなく、フツウに人間らしく、喜び、怒り、好き嫌い、恋愛感情あり。 その中で、24時間介助がなければ命が尽きてしまう鹿野さんと多くのボランティアとの濃厚な関わり合い(ぶつかり合い)が記録され、また著者の思いも書かれている。 強い個性と意思を持った障害者とそれにかかわる介助者に関する考え方は一般化できないが、しっかり記憶しておこう。2019/02/09