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内容説明
強く合理的で大きなシステムは,大災害の前にもろくも崩れ去る.大きなものに依存する受動的存在ではなく,小さく自立した能動的な存在として,「小さな建築」は人間を世界とつなげる.小さな単位を「積む」,大地に「もたれかかる」,ゆるやかに「織る」,空間を「ふくらます」.斬新な発想から建築の根源を問う.
目次
積む(小さな単位 水のレンガ ほか)
もたれかかる(強い大地にもたれかかる 生物的建築―アルミと石の「もたれかけ」 ほか)
織る(木を織る―「千鳥」のミュージアム 雲のような建築―タイルを織る ほか)
ふくらます(フランクフルトのふくらむ茶室 空間を回転し、開く)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ころこ
37
建築の歴史は、厄災をきっかけとして、大きくなることで発展していきました。しかし、3・11から著者が受けた影響は、逆に小さくなることでした。一見して、自然を凌駕しようとするヨーロッパに対して、その状況を上手く受け入れる日本という、文化論によくある対照になっています。「小さな建築」とは、物理的な小ささではなく、模様替えや取替の効く、コントロール可能な小さな世界の結合という意味です。その世界観を具体化するのが、「積む」「もたれかかる」「織る」「ふくらます」です。江戸時代の金属加工に起源がある高岡金谷町のアルミ技2019/08/03
chanvesa
29
「大きな建築」の魔力は、確かに昨今の大規模な自然災害を前に理論的に破綻しながらも、そう簡単に息絶えない気がする。インフラがなければただの巨大なゴミである都市は、そのインフラで人々の首をつかんでいる。バベルの塔から始まって、「大きい建築」には人々を中毒にする物語を有している。たぶん6年後の東京オリンピックに向けて、新国立競技場がストーリーテーラーになるだろう。スタバの「大きなアメリカ」批判の昔に、フォークナーはサトペン荘園のおぞましさを用いてそれを示していた。「小さい建築」は新しい物語を用意できるだろうか?2014/10/26
ビイーン
27
隈研吾氏の発想はホントに凄すぎる。「ウォーターブランチ」という名前の水を入れたポリタンクで屋根や壁、床をつくり、そこに色んな温度帯の水を流す。これで輻射型の微妙な冷暖房が可能になるのだそうだ。またピーナッツ型の膜構造「フランクフルトの茶室」もしかり。「小さな建築」は楽しい。2018/12/15
izw
26
東日本大震災を機会に建築について考え直してみたという。歴史的にも大災害のたびに新しい建築スタイルが生まれた。災害のたびに堅固で大きな建築を志向するようになってきたが、3.11ではいくら強く合理的で大きくても大災害には対抗できないことが思い知らされた。身近な材料で、自分の手で組み立てられるような、インフラも自立できるような「小さな建築」が面白いと思い、試行錯誤を繰り返してきたが、確信をもった。積む、もたれかかる、織る、ふくらますことで作る「小さな建築」が紹介されていて、新しい流れの息吹が伝わってくる。2015/12/14
松風
23
教材研究本(ちくま「コンクリートの時代」2)『自然な建築』が、素材と細部への挑戦だったのに対し、こちらは「機能から有機体への跳躍」。こちらも合わせて読みたい。2014/07/27