内容説明
日本軍によって満州国皇帝の座に就いた溥儀。清朝復活への執念と傀儡としての絶望。皇后、実弟への愛憎、石原莞爾、東条英機らへの月旦などなど。専属通訳として、会見に同席した林出賢次郎が残した「厳秘会見録」を元に、昭和史の闇とされた人造国家・満州国の実態と、皇帝・溥儀の素顔を明らかにする。
目次
「厳秘会見録」との遭遇
満州国の誕生前夜
「日満議定書」調印の舞台裏
小春日和の溥儀執政時代
砂嵐の中の皇帝即位式
訪日で遠のいた「清朝復辟」
「帝室御用掛」吉岡安直
傀儡国家の内実
浮上した世継ぎ問題
帝位継承をめぐる密約
日中戦争に揺れる満州国
一九三八年、「厳秘会見録」の終焉
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
midnightbluesky
8
気難しいとか、毀誉褒貶が激しいとか、帝位にすがりつく様は、あまりにも哀しい。そして戦争に翻弄された人々もまた加害者であり、被害者だという事実。2013/05/19
プリン
1
溥儀をはじめとする満州国首脳の通訳を務めた林出賢次郎氏の遺した「厳秘会見録」を用いたノンフィクション。この史料の存在を全く知らなかったため、関東軍司令官による内面指導の実態を垣間見ることができて、とても有益でした。気になったのは、この会見記録に見られる溥儀と関東軍司令官の会話が、実に儀礼を順守した口調であること。これが実際なのか、それとも文飾なのかが判別できません。帝位継承の密約については、これが司令官の一存なのか、それとも軍中央さらには日本政府の意向をふまえたものなのかも気になるところでした。好著です。2012/11/18
若黎
0
何故か溥儀さんの本は買ってしまう。真実のあなたはどれなんだ。2014/03/23
Toshiaki Konishi
0
映画『ラストエンペラー』が好きで何度も観ました。 溥儀の人物像は映画によるところが大きいですが、本書からは新しい印象を得られました。満州族の領袖・清朝最後の皇帝として立派な方であられたと感じました。最後の皇帝から支那の文化と歴史を垣間見ることができます。 また傀儡国家とはいえ、国家の中枢の詳細な記録としても興味深い。不安定な東アジアの中で建国事業に邁進している官僚達が生き生きとしているように感じられる。2013/02/14
ゲロデン
0
日本に侵略された傀儡国家「満州国」の皇帝と聞くと、いかにも理不尽な支配に抵抗した悲劇のリーダーといったイメージを持っていたが、そういうヒーローでもなかったんだなというのが最初に感じた感想。それぞれに思惑があって、騙し騙され、日中、いや、世界中全ての場所において、末端の国民はただ国家のエゴの犠牲になってきたのだと思う。この本にはそんなメッセージは込められてはいないけれど。2013/03/11