内容説明
大宅壮一ノンフィクション賞受賞。中上健次はそこを「路地」と呼んだ。「路地」とは被差別部落のことである。自らの出身地である大阪・更池を出発点に、日本の「路地」を訪ね歩くその旅は、いつしか、少女に対して恥ずべき犯罪を犯して沖縄に流れていった実兄との幼き日の切ない思い出を確認する旅に。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
244
第41回(2010年)大宅壮一ノンフィクション賞。 中上健次が「路地」と呼んだ 被差別部落を 巡る旅である。「破戒」「橋のない川」と 描かれてきた「路地」の 今を 巡る物語 ..心なしか 静逸な印象がするのは、時代の 変遷の影響なのだろうか? 自分の出自を抱えながら、ルーツを辿っていく..兄との再会が心に染みる 現代の「路地」の 物語だった。2017/07/16
ゆいまある
108
「路地の子」の作者が日本全国の路地(被差別地区)を訪ね歩いた記録。エタは肉の解体、皮革に携わり、生涯身分が変わらない。非人は罪人の監視などを行い、何かあれば元の身分に戻る。エタより非人の方が身分が下とされ、仲違いする仕組み。これらは仏教と共にインドから持ち込まれたカースト制度が元になっていると考えられ、なんかもう、仏教もヒンズー教も嫌いになりそうだよ私。差別がえげつないのは私の育った関西。東北はマタギ文化があるから被差別地区が少ない。人間は古来から肉を食べていたと再確認。静かな文体が心地よい。2023/02/15
harass
103
中上健次が自らの出身地の被差別部落を路地と名付けていたのにならい、同じく部落出身の著者による、日本の路地を取材する紀行文。雑誌「実話ナックルズ」に連載されていたものを書き直ししたもの。その土地の情景や歴史、出会った人々の話などのほかに著者自身の路地と家族の話を淡々と語っていく。おおっぴらに語られることのないものは、普通に語るべきか、それとも寝た子を起こしてはいけないのか、非常に難しい。押し付けがましさもなく、落ち着いた語りで複雑な思いに満ちた本。良書。2019/01/11
TATA
73
路地とは被差別部落を指す。これまで比較的タブー視されることの多かったテーマに切り込み、自身のルーツを明らかにしていくという内容には驚きを隠せない。日本の各地に点在する路地にまつわる事実の数々が歴史としての深遠さを示唆しており読み物として非常に重厚なものとなっている。何かしらもの寂しささえ漂うのは筆者の力量か、はたまた故郷を思うあまりに感傷が滲み出たものか。2019/02/21
Kazuko Ohta
72
中学時代、「促進学級」の存在により、被差別部落を知りました。主要教科の授業を別室で先生と1対1で受けていたのは同和地区の子ども。路地とは、中上健次が被差別部落を表した言葉。本書の著者も被差別部落出身で、路地を巡る旅を続けています。路地出身だということを堕落の免罪符にしないという意志が見て取れる。著者自身は差別を受けたことがないというものの、「生まれた環境を嘆くよりもどう生きるかが重要」、これが路地出身者以外から発せられたら、何もわかっていないくせにとなるでしょう。淡々と書かれているだけに、心を揺るがす本。2018/04/25




