内容説明
いま世界が注目する水中文化遺産。海洋戦略、文化政策はもとより、外交交渉のカードとしても使われ始めている。その背景には、ダイビング技術の普及や海洋工学機器の急速な技術革新による、水中考古学研究の著しい進展がある。その一方で、世界統一基準のもとでの保全管理も火急の課題として浮かび上がってきている。考古学、人類学、歴史学、地理学、法学、化学など多岐にわたる学際的な研究分野ともいえる水中考古学の最新動向の紹介を通して、今なぜ水中文化遺産が重要か、その本質を説く。
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目次
第1章 水中文化遺産と水中考古学(水中文化遺産 人間の遺骸は残らない ほか)
第2章 水中文化遺産は誰のもの?(自由の時代 各国独自の取り組み ほか)
第3章 水中考古学の方法(水中文化遺産の同定 偶然の発見 ほか)
第4章 世界の水中考古学(ヘルメット潜水 スクーバ・ダイビングの発明 ほか)
第5章 日本の水中考古学(モースと海事文化遺産 曽根論争 ほか)
感想・レビュー
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Koning
16
水中考古学を唯一やってる東京海洋大の先生の本。日本の法整備と社会的認知の無さが国辱レベルになってる事を憂いている。冒頭と第五章に出て来る与那国島水中自然遺産を一部門外漢学者がこれは人工物とか言っちゃった悪影響がもの凄い事を嘆いてらっしゃるのはとても同意。トレジャーハンターの跳梁跋扈からユネスコの水中遺産条約の100年という期間を過ぎると所謂遺骨収集も出来なくなる事や、メタンハイドレートなんかの掘削もそこに権利を有する外国船が沈んでいたら開発できなくなっちゃう事なんかがかなり危機感を持って書かれている(続2014/06/04
takao
4
与那国島沖水中自然遺産については、非専門家の大学関係者の追認により、「日本の水中考古学者は、自然石と人工物との区別もつけられない素人である」という悪評が確立してしまった。 (文献) 小江 水中考古学入門、水中考古学研究、海の考古学 バス 水中考古学、海底の文化遺産、水中考古学の冒険 ウィルクス 水中考古学概説 ボウゼンズ編 水中考古学 フレミング 海底の都市 井上 水中考古学への招待、海の底の考古学 アジア水中考古学研究所 水中考古学研究 日本の専門雑誌 アジア水中考古学研究所 海の文化遺産総合調査報告書2022/11/01
Meistersinger
4
陸上の考古学と同じく遺跡保全のため、遺物は引き揚げないことが原則だと初めて知った(トレジャーハンターは不倶戴天の敵)。ユネスコの条約により遺跡が見つかると現場保全に努めなくてはならず、これは広い領海をもつ日本の資源開発に影響を与えそう。日本の水中考古学は停滞気味とのこと。2015/07/19
kozawa
0
水中の文化遺産保護について。著者の思いをくどくど述べている所が多々あったりして読み手によっては気に障るかもーなどと思ったり。まぁ面白く読んだ2012/05/24
Book shelf
0
軸は1994年に発効した「海洋法に関する国際連合条約」や、2009年に発効したユネスコの「水中文化遺産保護条約」を批准した国々の対応と日本の対応の比較と評価(どちらかというとマイナスの評価)でした。 水中文化遺産を巡る動きが近年活発化してきており、内外ふくめて法的処理の仕方にはまだ問題が多いようですが、世界的な動きとしては水中文化遺産を保護していく方向に向かって国内で人材育成や研究機関の設立に力を注いでいる国が増えているようです。2012/05/10