内容説明
激臭を放つ粘液に覆われた醜悪な生物ヌメリヒトモドキ。日本中に蔓延するその生物を研究している私は、それが人間の記憶や感情を習得する能力を持つことを知る。他人とうまく関われない私にとって、世界とつながる唯一の窓口は死んだ妻だった。私は最愛の妻を蘇らせるため、ヌメリヒトモドキの密かな飼育に熱中していく。悲劇的な結末に向かって……。選考委員絶賛、若き鬼才の誕生!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Bugsy Malone
84
「第18回日本ホラー小説大賞長編賞」受賞作。人外の生物ヌメリヒトモドキを研究する私、その私の手記と言うかたちを採った物語。選考委員が悪文と評価した、殆ど会話のない、最愛の妻を亡くした私の心情をだらだらと吐露した文章。しかしながら、私にとってはこのしっかりとした文章力で綴られただらだらさ加減が何とも心地良かった。全編に渡り粘着質な物語、結末を知り、この文章の在り方も伏線と捉えるなら、執筆時23歳という著者に対して驚きを禁じ得ない。2018/08/21
むらKみ
81
残念にも170ページあたりを読んでるとき、ホームと電車の間に本を落としてしまい、読了できませんでした。(;_;) さあこれからという時に残念でした。あ~あ(;_;) こんな事あるんですね。違う意味で残酷です。2013/11/01
紫 綺
60
第18回日本ホラー小説大賞長編賞受賞作品。すみません、ひたすら苦痛だった。恐怖より、人間大のナメクジのような架空の生物「ヌメリヒトモドキ」の気持ち悪さばかりが際立ち、ただひたすらオチを知るために読了。この本で一番よかったのは、表紙の不気味なイラストだった。2012/02/10
Gemi
54
ホラー続きの読書。こちらも初読みの作家さん。装丁の不気味さ、タイトルの響きがなんとも不気味で想像力を掻き立てる。ホラーなのだがとてつもない恋愛物とも言えなくもない。「ヌメリヒトモドキ」なる全身粘液で包まれ、凄まじい臭いを放つ大きいナマコのような不死の生物が世の中に蔓延っているという設定。放置していれば人間に害を与えるわけではないが不気味で臭くて不快になる。と、そんな世界に生きているヌメリヒトモドキを研究・調査している、最愛の妻を亡くした男の手記の形式でこの物語は進む。正気か狂気か愛ゆえか。なかなか面白い。2016/11/02
ピエール
50
激臭を放ち全身が粘液で覆われたヌメリヒトモドキ。このヌメリヒトモドキがもつ人間の記憶や感情を習得することができるという特性を生かし、主人公の私は亡くなった妻を蘇らせることに熱中する。作品の発想がまず奇抜であるし、ストーリー的にも最後の結末が実に見事であったのでなかなかに満足させていただきました。ただ多くの人が指摘している様に文章のクドさが少し読みづらくもあり、あと個人的にはヌメリヒトモドキの不快感をもっともっと推し出してもいいように感じました。何れにしても23歳でこの文章を紡ぎ出せる筆力は驚嘆です。2014/12/31