内容説明
日本俳句界の重鎮・金子兜太氏による、講演・寄稿集。若き日の戦争体験や、自らを育んだ風土、師や盟友たちのことなど、著者ならではの味わい深い語り口で綴られている。かねてから「荒凡夫〈あらぼんぷ〉」(=自由な凡人)を自称する著者は、戦後における俳壇の牽引者であり、小林一茶や種田山頭火の研究でも世に知られているが、卆寿(90歳)を過ぎてもなお「荒凡夫のごとく生きたい」と欲し続けている。なぜ、著者は俳句とともに生きているのか。なぜ、俳句は人生の生きがいとなり得るのか…。本書を読めば、俳句の真髄の一端に触れられるだろう。
目次
第1章 戦争体験(私の戦争体験と俳句 「炎天の墓碑」への誓い)
第2章 私を育てた郷土・肉親(受け継いだDNA 産土・秩父の風土に育てられる)
第3章 自画像(蛙と柿と雪 荒凡夫 ほか)
第4章 師・先輩・友人たち(師・加藤楸邨を語る 白虹と連作と―横山白虹のこと ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
てくてく
4
自身の生い立ちについては別の本でもすでに読んで知っていたが、はねっかえりの人生を送る上で妻に与えたプレッシャーや、戦争をその最中は肯定せざるを得なかっただけにその後の反戦意識があること、そして俳句への姿勢が年とともに変化していったことなど、初めて知ることもあり、面白かった。2015/12/26
笛吹岬
1
金子兜太の自伝と言っても良い。雁坂峠を挟んだ秩父往還に関する記述が面白い。甲斐も山国だと思っていたが、高原状の明るさがあり、それにくらべて奥秩父は山が迫っているからだろう。2011/02/12
chiuchiu
0
たまたま図書館で。著者の生い立ちから戦争経験、そして知り合った俳人達との交流や著者の視点から分析した俳人たちの事が、読みやすい文章で綴られている。医者である父も俳人であったとは知らなかった。著者自身はまさに豪放磊落で、現在も闊達でいらっしゃる。だがその背景には辛い戦争体験を経て、己の進む道、戦争を絶対してはならないという信念を貫き通している強さ、亡くした戦友たちへの祈りがあるからだと思う。他者への観察眼は鋭く、本著で初めて知ったが、上甲平谷の句とその人となりを表す文章が好きだ。2015/07/10
黒とかげ
0
なかなか良かった。戦時中の話も良かったし、俳句の話も良かった。この人は話すのが上手だなぁ。胸に迫るものがある、それはきっと本当のことを話しているからかな。2021/02/27