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内容説明
1930年代前半、国内高峰の冬期登山が一般的ではなかった時代に、たったひとりで厳寒の北アルプスを駆け抜け、「不死身の加藤」との異名をとった加藤文太郎。風雪の槍ヶ岳・北鎌尾根に消えたその生涯は、新田次郎の小説『孤高の人』(新潮社)でも知られ、谷甲州の『単独行者』(山と溪谷社)にも描かれているが、彼の真実は残された著作にある。加藤の遺稿集『単独行』を新たな視点で編集し直し、時代背景などの詳細な解説を加え、ヤマケイ・クラシックスシリーズとして生まれ変わった『新編・単独行』を文庫化。永遠の山岳名著が、より手軽に、読みやすくなって新登場。
目次
第1章 単独行について(単独行について 冬・春・単独行―八ヶ岳/乗鞍岳/槍ヶ岳/立山/奥穂高岳/白馬岳 ほか)
第2章 山と私(私の登山熱 山と私 ほか)
第3章 厳冬の薬師岳から烏帽子岳へ(初冬の常念山脈 槍ヶ岳・立山・穂高岳―A槍ヶ岳・唐沢谷/B立山/C奥穂高・唐沢岳・北穂高 ほか)
第4章 山から山へ(北アルプス初登山 兵庫立山登山 ほか)
加藤・吉田両君遭難事情及前後処置
後記
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
はるを
69
🌟🌟🌟☆☆。登山家、加藤文太郎の記録全集。この本単体で楽しめるのは完全に加藤文太郎マニアか本格的な登山者のみ。谷甲州氏の「アラインゲンガー」と併読して読むと臨場感が溢れるのでオススメ。2016/11/24
翔亀
55
正統的日本登山史に名を残した人ではない。未踏峰や岩の初登攀をした訳でもないし、山の思想を説いた訳でもない。しかし新田次郎が「孤高の人」で谷甲州が「単独行者」で、競うようにモデルにした。当時(昭和初期)の登山の常識を覆し、サラリーマンが有給休暇を使ってガイドなしで(金をかけずに)単独で冬山を走破したことが人気の秘密だろう(積雪期単独長距離縦走は新記録)。庶民でありながら反骨、超人性を発揮し、しかし若くして同伴行で遭難死した皮肉が興味を掻き立てずにはいられない。そんな加藤が自ら記した記録が面白くない筈がない。2015/07/18
にし
43
孤高の人を読んでから読みたいと願った単独行。ポーカーフェイスから覗く熱い登山熱が伝わります。非凡なサラリーマン登山家の平凡な悩みや動揺に加藤文太郎の人物像が浮かび、何よりも遭難時のパートナー吉田氏の事も誤解なく書かれています。この本は地図と合わせて読むと非常に面白く驚かされます。繰返し読み、その都度の感動を味わえる登山記録であり自己形成の物語でもありました。2015/01/31
読書ニスタ
38
新田次郎の孤高の人は、ストイックで、単独行に否定的な周囲の目を意識した作品でした。こちらは好きで山登りをしている本人の言葉なので、登山に対して伸びやかで、生き生きとしたものでした。子供が出来て数ヶ月で冬山に登りに行くとか、そして命を落とすとか、無責任ではないかと思うこともありますが、未亡人も寄稿しており、覚悟の結婚なのかもしれません。自然厳しい冬山をひょいひょいと登るスキルがあれば、辞められないのもわかります。猛暑に読んで、涼みませんか。2019/08/07
saga
38
『孤高の人』を読了後に積読。そして植村直己『青春を山に賭けて』を読んで本書を読みたいと気持ちが昂った。登山を趣味とすることなく、なので日本アルプスには詳しくはないので、加藤の山行の凄さは実感できないが、単独行者としての凄みは感じられた。彼が山を征服するということに言及する文章に、その後の遭難を想いを馳せてしまう。現代に比べて装備の貧弱な時代に、冬山を次々に縦走していく加藤。しかし、彼の記録でも思いもよらないビバークや雪庇を踏み抜いて滑落という経験をしている。新妻や幼子を残して遭難死してしまった加藤の無念!2017/12/25