内容説明
酒田、雄大な庄内平野の最上川河口に位置する街には、世界に誇れるものがあった。淀川長治や荻昌弘が羨んだという映画館(グリーン・ハウス)。そして開高健や丸谷才一、土門拳が愛したという料理店(ル・ポットフー)。なんとそれらは1人の男――佐藤久一がつくったものだった。酒田大火の火元となった映画館が彼の波乱に富んだ人生を象徴する。(講談社文庫)
目次
プロローグ 酒田大火
第1章 グリーンハウスその1 1950~55年
第2章 グリーンハウスその2 1955~64年
第3章 東京・日生劇場 1964~67年
第4章 レストラン欅 1967~73年
第5章 ル・ポットフー(清水屋) 1973~75年
第6章 ル・ポットフー(東急イン)その1 1975~83年
第7章 ル・ポットフー(東急イン)その2 1984~93年
第8章 ふたたび、レストラン欅 1993~97年
エピローグ 見果てぬ夢
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
三上 直樹
3
52歳の誕生日に、温めておいた本を読了。娘と縁のある酒田で、名家に生まれて映画館とレストランで名をなした佐藤久一氏の評伝ですが、さまざまな人々と仕事をしながらも、なぜか孤独の影をみせている氏の姿に、自分を重ね合わずにはいられませんでした。それでも、私の存在が弘前から忘れ去られるかどうかはこれからだと思っていますので、この本を他山の石にできるよう、生きたいと思います。2016/11/06
Kazuko Ohta
2
昭和24年、山形県酒田市に開業した映画館“グリーン・ハウス”は、あの淀川長治氏が「世界一の映画館」と絶賛したという伝説の映画館。同じく酒田市にあったフランス料理店“ル・ポットフー”は、食通の作家や著名人が通いつめた店。映画館とフランス料理店、双方の支配人を務めたのが佐藤久一なる男。昭和51年の酒田大火の火元がグリーン・ハウスであったことから、人々の口に久一の名前がのぼることはなくなり。映画とフランス料理、華やかな世界で客を楽しませながら、自身がくつろぐことは知らなかったようで、晩年の記述には胸が痛む。2017/05/07
nobuem
1
この生き方を素直にかっこいいと思えなくなってる自分は良くも悪くも大人になったんだなと思う。2017/07/08
がっちゃん
1
映画館にしろ、レストランにしろ。その空間がお客様一人ひとりにとって特別であること。なぜ忘れられたのか。と、タイトルが問いかけのようになっている所に含みがあって良いな。2016/08/28
深窓
1
酒田市に日本一といわれた映画館とフランス料理店を作り上げた男の生涯を追った物語。酒田という小都市にこれだけ濃密な人生を歩んだ人がいたということに驚く。こうして本にならなければ、本当に忘れ去られてしまったのだろうと感じてしまった。2015/08/08