内容説明
織田信長の妹・お市の方と、近江の雄・浅井長政のあいだには3姉妹がいた。長女・お茶々は豊臣秀吉の側室として権力をふるった後の淀君。次女・お初は京極高次の妻となり、大坂の陣で微妙な役割を演じる。そして、最も地味でぼんやりしていた三女・おごう。彼女には、実に波乱に満ちた運命が待ち構えていた――。おごうの生涯を描いた長篇歴史小説。
感想・レビュー
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とん大西
122
嫉妬深い将軍御台所、春日局のライバル…。大河では上野樹里さんが好演しましたが、私的におごうの印象はあまり良い方ではありません。何かを為した女傑でもないですが、永井さんの筆致にかかると戦国に生きる女の鮮やかな叙事詩と叙情詩になってしまうのが流石です。上巻は彼女の若き流転の日々。浅井三姉妹の末娘として生まれ、父母と死に別れ、秀吉の比護下で静かに暮らす少女時代。初めは佐治家に嫁ぎ、次は秀吉の甥秀勝と再婚。泰然自若か無我の境地か、あらがうことなく流れに身をまかせ生きるおごう。侍女おちか目線の語りが効いてます。2021/05/29
レアル
65
浅井三姉妹のお江物語。同著者のお市を描いた『流星』は戦国の動乱に巻き込まれて生きる女という描き方だったが、このお江物語は三姉妹の中でも、無口でおっとりとのんびり屋さんというイメージで書かれていて、かつ歴史の流れとは無関心に己のみちを進んでいるという描き方。お江の登場よりも侍女・おちかの登場が多く、この本の読み処はきっとこれではないか!と思うくらい、おちかはその場その場でいろいろ考えたり空想しこの物語を盛り上げている。おちか目線での物語。下巻へ。2017/06/14
ソーダポップ
24
2011年に放送された、大河ドラマ「江~姫たちの戦国〜」を連想して読んだ。天真爛漫、快活なお江を想像して肩すかしをくらった。作中のお江は、「薄ぼんやり」「阿呆」「重鈍」などと表現されている。主人公はお江だが、彼女の考えや言葉はほとんど出てこない。すべて侍女の「おちか」の目を通して語られる。そんな、数少ない言葉の中に図太さが見えかくれするのも面白い。上巻は、朝鮮出兵までが描かれているが、その後二代将軍「徳川秀忠」に嫁ぎ、徳川初期時代の大奥の支配者になっていく過程が、どんな風に描かれているのか、下巻も楽しみ。2023/08/10
佳乃
21
おごうさま、何を考え思っているのか全くわからないよ。けれど、その無口さが幸とでることもあり、なかなか面白いところでもある。おちかにしたらハラハラせずにはいれないこともあろうが、私的には「おごうさまはこれでいいんです」と思えてならない。人生長いようで短いけれど、与九郎殿と離縁後のおごうさまがどうなられていくのかが楽しみでならない。また、おちかはいつになればちくぜんに心惹かれているのに気づくのか・・・2020/01/13
エドワード
17
永井路子原作の本作品では大河ドラマは出来なかったろう。まず浅井三姉妹の仲が悪い。ごうは浅黒い肌で無口でのろま、美貌で誇り高い茶々と初にいつも馬鹿にされているという設定だ。上巻では最初と二番目の夫、佐治一成、豊臣秀勝との生活が描かれる。今年の大河ドラマでは、茶々が「両親の仇」と忌み嫌っていた秀吉の求愛を受け入れていく過程が丁寧に描かれていた。歴史ものは色々な解釈があって面白い。下巻へ続く。2011/12/04