内容説明
西暦20XX年、有史以来初めての、しかし地球誕生以降、幾たびも繰り返されてきた“破局噴火”が日本に襲いかかる。噴火は霧島火山帯で始まり、南九州は壊滅、さらに噴煙は国境を越え北半球を覆う。日本は死の都となってしまうのか? 火山学者をも震撼、熱狂させたメフィスト賞、宮沢賢治賞奨励賞受賞作。(講談社文庫)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パフちゃん@かのん変更
81
医師である著者のデビュー作。メフィスト賞、宮沢賢治賞奨励賞受賞。霧島火山帯が破局的噴火を起こし、南九州壊滅。その噴火の被害の中を妻を助けに行く主人公の地震学者と新聞社の友人の詳しい描写がすごい。しかしこの大災害はその直接の被害だけにとどまらず円の急落など経済的破綻、食糧危機の到来。アメリカや中国も絡んで社会的な立場も難しい。『古事記』や『ヨハネ黙示録』も引用して火山と人類の関わりにも触れる。一大スペクタクル。でも終わり方が、あの首相の演説ですべてが上手く行くのか。東海地震・東南海地震・富士山噴火は・・?2015/06/15
goro@80.7
76
「日本沈没」以来の衝撃作。いつか来るとは思うけどまさか明日じゃない事を祈るばかり。日本は地震列島であるばかりか火山列島でもあってここまで災害大国だとは恐ろしいし環境が激変してしまう世界は日本だけでは済まない。国土をうしない難民となったらどうするのか。為政者は目先の事だけではなく起こりうる危機を見据えて欲しい。3.11前に書かれた本書だが、必ず来ると覚悟しなければならないね。災害パニックだけを描くだけではない著者の慧眼に心打たれました。2022/12/10
流言
75
これほどの作品を書き上げるのに、どれだけの調査取材を重ねたのだろうか。それを考えるだけで気が遠くなりそうなほどの圧倒的情報量で書き連ねられる災害小説である。読み始めた時はその厚みに二の足を踏んでいたが、読み始めてからはあっという間に読み終えてしまった。ほとんど第六感のような感覚で災害に備えて、可能な限り日本にとって都合のいい想定をしてなおこの有様なのだと思うとゾッとする。その一方で、その破壊的な未来を裏切ることのない形で日本にとって希望の見えるラストを描き切ったパワー溢れる筆力に惜しみない喝采を送りたい。2015/05/08
どんぐり
74
日本が世界の地震と火山の1/10を引き受ける地変の国である。噴火警戒レベル2の草津白根山をはじめ、阿蘇山、箱根山、浅間山、桜島、そしてレベル5の口永良部島まで、いまや全国規模で火山が鳴動している。これはフィクションであるが、非常にスケールの大きな災害小説である。九州南部の宮崎県と鹿児島県県境に広がる霧島火山が、地下10キロから破局噴火を起こし、南九州全域が一瞬に壊滅してしまう。この災害は極地に止まらず、噴火による火砕流、火山灰による土石流、やがて噴煙によって世界規模の破壊をもたらす。これは、ありうる話だ。2015/06/24
nabe
73
箱根いよいよ怖い。この本を読んだ後だと殊更に。日本人という民族は大地震などの地学的なイベントが起こる前に踊り狂うと言う。史実がそうなのだから突拍子もない話だとしても反論出来ない。そして事実、日本中が政権交代に熱狂した後に大災害が起こった。とても恐ろしい事に。この本で与党になった総理の名は「菅原」刊行は今世紀始め。偶然か必然か分からないが背筋が凍り付きかけた。フィクションであってくれと願うしかない。古代文明の栄華と滅亡の歴史が説得力を増して読者に語り掛ける。火山の力に、神の怒りに抗う術はないのだと(続く)2015/04/30