文春文庫<br> だりや荘

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文春文庫
だりや荘

  • 著者名:井上荒野
  • 価格 ¥590(本体¥537)
  • 文藝春秋(2016/05発売)
  • ポイント 5pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784167737016
  • NDC分類:913.6

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内容説明

両親の事故死を機に東京を引き払い、信州で暮らす病弱な姉・椿のそばへ越してきた妹・杏とその夫・迅人。両親の気配があちこちに残るペンションを引きついで、3人のおだやかな日常が始まった。椿にはやさしい男友達・新渡戸さんがおり、ある日働きはじめたゾクアガリの青年・翼もペンションに新風を吹き込んでくれる。しかし、そこでは優しさに搦めとられた、残酷な裏切りが進行していた。精緻な描写と乾いた文章が綴るいびつな幸福。うつくしくて痛い愛の行方は……。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

のっち♬

128
姉妹が営む山奥のペンション、姉と関係を持つ妹の夫を中心に織りなされる恋愛劇。そこに姉の恋人、妹に恋するバイト青年も絡むが、嫉妬や憎悪より相手を思いやる気持ちが優っているのでドロドロしない、寧ろ透明感がある。迅人の傲慢な思考はゲス男そのものだが、姉妹の嘘に潜む悔恨や背徳感などの細やかな心理描写や自棄的な言動がもたらす静かな緊張感が魅力的。次第に危うさに拍車がかかるストーリーテリングも功を奏している。新渡戸の末路は血縁が絡むからこそ背負わされる残酷な宿命を物語っており、唐突な幕切れに更なる不穏な兆しを添える。2021/08/20

ぷっくん

60
今年2冊目。姉、妹、妹の夫の不倫物語。読後は悪くないが、全く共感出来ず笑。3人とも、あえて知っていても知らないふりをして最後まで進むという、ただの不倫物語なのだけど、ドロドロな感じはなくどこか綺麗な印象。しかし旦那はせこい。姉もズルイ。妹も変わり者だと感じた。でも先が気になり、さっさと読める一冊!2017/01/11

ケロコ

46
【図書館】井上荒野らしい作品。不倫というものは当事者同士だけが美しいと思っている行為なのだと理解していたが、ここではそうでもないようだ。特に椿は相手が妹の夫だということに余り意味を感じていない。だからこそ妹は姉に何も言えないのだ。不倫は所詮不倫。美しくも儚くもなく、周りの人間を傷つけるだけ。話してしまうと全て壊れてしまうから誰も何も言わないし触れないのかもしれない。端から観ていると舞台の様でも演じている当事者たちは耐え難いだろう。まぁ耐え難いのは妹だけなのかもしれないのだけど。2019/07/22

Mishima

37
まるでもつれた糸みたいだ。そのもつれ具合は、もしかしたら、浮世離れした、花のように美しく見えたかもしれない。四つの糸。糸はそれぞれの役割を担おうとして、コツコツともつれていった、音もなく編まれるかのように。好きになるのに理由なんてない。そうだね。どうせなら、四つの糸全てがもつれまくってぐちゃぐちゃになってしまえば良かったのかもね。そう思わせるような、やるせなさがしみだしてくる。まるで、登場人物になってしまってる、まんまと。誰も悪くない。誰も幸せにならない。だれも嫌いになれない。それって、物語として上等。2018/12/25

ぐりぐら

30
両親がやっていた信州の山のペンションを引き継ぐ夫婦と姉。山の生活や風景の描写はとても素敵なのに、この3人の関係はどうにも共感出来ませんでした。でも井上荒野さんの文体だからか、不快感を感じつつも最後まで読んでしまいました。2017/08/01

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