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内容説明
科学の殿堂・ベル研究所の、若きカリスマ、ヘンドリック・シェーン。彼は超電導の分野でノーベル賞に最も近いといわれた。しかし2002年、論文捏造が発覚。『サイエンス』『ネイチャー』等の科学誌をはじめ、なぜ彼の不正に気がつかなかったのか? 欧米での現地取材、当事者のスクープ証言等によって、現代の科学界の構造に迫る。なお、本書は内外のテレビ番組コンクールでトリプル受賞を果たしたNHK番組を下に書き下ろされたものである。
目次
第1章 伝説の誕生
第2章 カリスマを信じた人々
第3章 スター科学者の光と影
第4章 なぜ告発できなかったのか―担保されない「正しさ」
第5章 そのとき、バトログは―研究リーダーの苦悶
第6章 それでもシェーンは正しい?―変質した「科学の殿堂」
第7章 発覚
第8章 残された謎
第9章 夢の終わりに
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やっち@カープ女子
52
なぜ論文捏造が繰り返されるのか。科学ジャーナリストの村松さんの取材が徹底されていて不正までの過程がとても良くわかる。これ、小保方さんが早くに読んでくれていたらなぁ。研究を始める人に必ず読ませるとか、研究室に置いて欲しい一冊。2014/10/04
harass
51
NHKディレクターが自ら手がけたドキュメンタリー番組を書籍化したもの。2002年に発覚した名門ベル研究所の研究員シェーンが起こした捏造事件の経緯と関係者へのインタビューで構成されている。ドイツ生まれの科学者はベル研究所に入ってから二年後立て続けに画期的な実験結果の論文を発表する。これまでにない高い温度での超電導が可能になったと。ノーベル賞クラスの内容に、世界中の研究者が追試を行うがだれも再現できなかった。次々に更に高い温度を更新していき、多い時には8日に一本の割りで論文を発表していくシェーン。これは良書。2016/09/21
びす男
24
06年に書かれた、ヘンドリック・シェーンの捏造事件を扱ったものだ。世界中の科学者を驚嘆させ、感動の渦に巻き込んだ数々の論文が、じつは捏造だった……取材で浮かび上がった事件の原因は、シェーンだけに帰属させられるようなものではなかった。科学界の専門化や成果主義化、そしてそれを取り巻く現実の変容などの構造的な根深い問題が表出したのである。これぞジャーナリズムが担うことのできる仕事だろう、「素晴らしい」の一言である。本当に感動した。書評http://niksa1020book.blog.fc2.com2014/06/24
mazda
23
「末は博士か大臣か」、と言われたのは昔の話のようです。順風満帆の研究生活を送っていたはずのシェーンは、多くのデータを捏造し、世界を混乱の渦に巻き込みました。特に高温超伝道という、キャッチーなテーマ選定をした上に、絶縁膜をつけるというエレクトロニクスの要素を取り入れたことも、一世を風靡した理由の1つかも知れません。本人はあくまでも実験の失敗で捏造ではない、と主張したようですが、どう見てもこれは悪意のある捏造だと思います。この数年後、STAP細胞で同じような捏造事件が起きるなど、誰が想像したでしょうか?2015/08/17
ちくわん
19
2006年9月の本。小保方さんのことだと決めていたが、あちらは2014年。ベル研のヤン・ヘンドリック・シェーンが「酸化アルミ膜の生成」に神がかり的な成功を納め、次々と超伝導の記録を塗り替えた、という虚偽。この話で思い出すのは、かつての職場に現れた神。何があったかは…だが、やはり神と崇められる人には何か違和感を覚えた。人生の真実として、最期まで忘れずに生きていこう。2022/07/28