内容説明
こわれた家族、さえない学校。体内に滾るのはサッカーへの情熱だけ。それさえも、この国では行き詰ってしまうのか。2001年、スペインU─17とのサッカー親善試合に急遽招集された無名の高校生、志野リュウジは、世界の壁を痛感し、単身スペインに渡ることを決意する。両親との葛藤、国籍のハードル、友情や淡い恋など、ビルドゥングスロマンの味わいを発揮しながら、選手の目線から驚くべき緻密さでゲームシーンを再現。本邦初の本格サッカー小説、待望の文庫化。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ユザキ部長
76
片仮名で表すリュウジ。内なる魂を宿す。魂は龍であった。祖国を捨てる事は魂を無くす事か。いや先ずはこの龍とともに暴れてみせる。2018/05/17
Hideto-S@仮想書店 月舟書房
73
その少年の魂には〈龍〉が宿っている。自分のサッカーを追及するため、単身スペインに渡った16歳の志野リュウジ。自分の寿命を残り20年と定め、燃え尽きるようなサッカーを追い求めている。海を渡ってたどり着いたのは、サッカー大国の最底辺のチーム。爆弾テロで片手を失くしたセンターバック。元ストリートキッズのミッドフィルダー。人生を切り拓こうともがくライバルたちの覚悟をみた彼は、親や兄弟を捨てる決心をする。研ぎ澄まされた肉体の描写力に、何度も芝生に立っている錯覚を覚えた。鳥肌がたつ。ゴールネットが揺れ、魂が震える。2015/04/12
サンダーバード@読メ野鳥の会・怪鳥
37
狭き日本のサッカーに幻滅し、単身日本を飛び出しスペインに渡ったリュウジ。勿論「サッカーという共通言語があれば、言葉はいらない」なんて甘い世界ではない。リーガ・エスパニョラの下部組織で身も心も削られ、もがき苦しみながらも前を目指す日々。スポーツ小説にはいくつもあるが、サッカー物は少ないのではないだろうか?作者はサッカー経験はないというが、フィールドを駆け巡る選手の情景が目に浮かぶ。家族あるいはチームメイトとの出会いと別れ、心の葛藤。そうしたものを乗り越えながら成長していくリュウジ。名作だと思います。★★★★2015/06/05
まる
34
サッカーを全然知らない私には用語が時々わからず上手に場面を思い描けないところもありましたが、面白く読むことができました。アクション小説だというあとがきに納得です。これまで読んだスポーツものと違って、チームメンバーと心を通わせるような場面がほとんどないのが驚きでした。やっとチームがひとつになったと思えば、もうそのメンバーではなくなってしまう。我が子が夢のために親権を放棄してくれと言われたら、私なら了承できるのだろうかと泣きそうになりました。2018/02/16
ウィック&ぺディ
23
★★★★☆2020/10/15