文春文庫<br> 姫君

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文春文庫
姫君

  • 著者名:山田詠美
  • 価格 ¥509(本体¥463)
  • 文藝春秋(2016/05発売)
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  • ISBN:9784167558055
  • NDC分類:913.6

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内容説明

「母が首を吊ったのを見つけた時、ぼくが、まだ五歳だったのは幸せなことだ。十歳だったら泣きわめいていただろうし、十五歳だったら心の病気にかかってた。今だったらどうだろう。きっと笑ってた。二十歳。もう、ぼくは、人が、おかしくなくても笑うということを知っている」(本文より)。人が人を求める気持ち、コトバにできない寂しさを描いた短篇集。人を愛することで初めてうまれる恐怖、そんな“聖なる残酷”に彩られた、忘れがたい物語。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

360
5つの作品からなる短篇集。表題作の「姫君」は、谷崎の『春琴抄』を、思いっきりチープに、しかもこれでもかというくらいに通俗的にしたて上げたもの。もちろん、それは著者が意図したことである。すべてが貧乏臭くて哀しい。愛はストレートには表現できないのだ。何故ならば、格好悪いから。篇中で一番優れているのは、巻頭の「MENU」。かならずしも、他の読者の賛同は得られないかもしれないが、これぞ第一級の恋愛小説。また「検温」は、謡曲の鬼女を髣髴とさせるかのごとき趣きだ。他2篇「フィエスタ」と「シャンプー」は、やや凡庸か。2014/10/22

びす男

103
「耐えられない。一番寂しくさせたくない人のことを、かけがけのないと呼ぶのではなかったか」。MENUと姫君が特に気に入った。山田詠美さんは、人の抱く感情を上手に書く。人を好きになったときの、あの危うい感じが、字を目で追うだけでひしひしと伝わってくる。結末が切ないだけではなく、登場人物の処理できない感情が伝わってきて、それが読者を締め付けるのだ。自分よりも大切な人ができること。それが幸せなはずなのに、逃げ出したくなる。「その人が一番、恐い。愛していたはずの孤独をあっという間に無意味に変えるその人が」。2017/05/05

巨峰

84
死と生とそれから愛を巡る傑作短編。「姫君」の二人のなんとも親密な関係とその悲しい結末。余韻が震える2017/11/02

優希

50
愛と生と死の中で描かれる欲望や性欲の生々しさを感じずにはいられません。淡々としながら尖っていて、リアルな心情が刺さります。やるせなくて、自分の立場なんてどうでもいいくらい求め合う気持ちの強い恋なのに、言葉にできない孤独の寂しさがあるから、収録されている短編に惹かれるんだと思います。傷を上手く見せられないのに惹かれあい、愛することは残酷ですが、だからこそ美しくも見えます。こんなに贅沢な恋愛小説はなかなかないでしょう。特に絶望と拒否に満ちた『MENU』と支配関係を描いた『姫君』が好きです。2014/05/22

佐島楓

28
五編の短編集。どれもサディスティックに尖っている。最後に収められている「シャンプー」が良かった。主人公の女の子「空」と、その父親との距離感が悪くない。一般的な「ふつう」ではない。「ふつう」というのを私は知らないけれど。新しい恋に踏み出していく空ちゃんへは、素直にエールを送りたい。2013/10/09

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