内容説明
「小春日和のような穏やかな暮らしを一変させた妻の入院、そしてあまりに唐突な末期ガン宣告。それは私にとって、すさまじい木枯らしの日々の始まりでした」。老年期のとば口でたったひとりの家族を失ない、やがて深い孤独と後悔から体調を崩し、しだいにうつ状態へと落ち込む。元NHKのお天気キャスターとして人気を博した著者が、伴侶の死、自殺未遂、精神科入院を経て回復するまでの痛切な日々を率直に語り、反響を呼んだベストセラー。
目次
プロローグ 人生の小春日和
木枯らし(初めての木枯らし;二〇パーセントの日々 ほか)
妻と迎えたいくつもの季節(あの頃のふたり;子供のいない夫婦 ほか)
時雨(不安と絶望;後悔と罪の意識 ほか)
エピローグ そしてまた、小春日和(降りやまない雨はない;人生は展開するもの)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
yoshida
130
倉嶋厚さんは最愛の奥様を喪い、自分を責め続け強度のうつ病となる。自裁のぎりぎりの線までうつ病は進行。家事をお願いしていた水口さんの助けもあり入院し、徐々に回復に至った。私は離婚しているので、まず倉嶋さん夫婦の素晴らしい夫婦関係に感動した。相手に起こった良い出来事を自分のように喜ぶ姿に素朴に感動した。得難い間柄だと思う。それだけに、倉嶋厚さんを襲った衝撃は計り知れない。この作品では倉嶋厚さんは、うつ病は必ず治る病気と書いている。確かに波はある。それでも明日に絶望せず、今日を懸命に生きれば、それで良いと思う。2017/03/19
佐島楓
38
奥様と死別され、うつ病を患ってしまわれた著者。立ち直るまでの日々がいかに苦しいものであったか、共感できた(簡単に共感できた、などと申し上げてはいけないが・・・)。心の支えを失ってしまわれた方のきつさであったり、自分ではどうしようもなかったことで苦しんだり、後悔したり。ただ、こう文章に著されることで救われ、またどなたかを救うことも、確実にあるのだろう。どんな状況にあっても、優しさだけはなくさずにいたい。2014/12/28
hiro-yo
24
倉嶋さんは、かつて昔にNHKお天気キャスターとしてご活躍されていたことを記憶しています。 先日拝読した城山三郎さんの『そうか、もう君はいないのか』と同じく、ご本人の結婚から妻との別れ、そして晩年の姿が綴られています。ただ、妻との別れは、倉島さんは城山さん以上に辛い。 私が同じ立場になったら、私も倉嶋さんのように心にも深い傷を負いそうだ。 気象学者らしく、気持ちを天候に置き換えて表現されているところが特に印象に残った。 2019/05/22
まさげ
15
テレビのお天気コーナーでの丁寧なお天気解説、穏やかな季節のエッセイ。私生活ではこんな苦労されていたとは…。 つらい出来事が書かれていましたが、最後はいつもの倉嶋さんの穏やかな季節の便りでした。2019/02/15
mami
12
NHKの気象予報士だった方の体験記。奥様を亡くされたあとにうつを発症。真面目真面目で生きてきたことが伝わるだけに、気持ちの持っていきようがなかったんだろう。身の回りのお世話をして下さる方に恵まれたことは幸運。 2021/10/13