内容説明
やはり今晩にしよう──男の悲壮な決意は──自殺。手広く不動産屋を営んできたが、あっけなく去ったバブルは彼に多額の負債を残した。策は尽き、家族を守るための最後にして最善の手段を胸にひめつつ、ふと思い立って訪れた町で一軒の古い銭湯を見つける……。ありふれているようで多様な個性に富んだ市井の人々の表情。輪郭をうしなった魂が、この著者ならではのあふれる愛情をふきこまれ、しだいにくっきりとした力をとり戻していく表題作など、八つの短篇を収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ehirano1
163
「オリンポスの聖女」を読んで、言葉では語らずに体で語る愛もあるのだと感動しました。2019/06/09
mint☆
133
超有名な作家さんですが初読み。なんとなく大人の男性が好んで読むイメージだったので今まで手が伸びなかったんです。人に勧められいただいたので読んでみたらとても良かった。本の帯に"あなたの心を静かに温める八つの物語"と書いてありましたが、意外にもバラエティに富んだ短編集。心温まる物語はたしかに何本かありましたが奇妙だったりホラーテイストなものも。「シエ」「永遠の緑」が泣けました。とても素敵な短編集でした。 2020/04/26
ミッフー
124
全8編からなる短編小説。平成最後の小説か〜と、感慨に浸りながら完読👍ほっこりさせる「永遠の緑」😊、ブラック的オチのある「再会」「トラブルメーカー」「零下の災厄」😱、人の業を感じる「マダムの喉仏」「オリンポスの聖女」🤔、そしてジンワリと感涙してしまう「シエ」「姫椿」😂どの作品もバラエティーに富み飽きさせない👍中でも僕一番のお気に入りは「姫椿」✨不況で不渡り寸前、死を考える主人公が妻と知り合い細やかな生活を送ってた二十数年前の銭湯にタイムスリップみたいな😄一番浅田氏らしい渋い秀作、唸らせます🤣2019/04/30
takaichiro
115
人間にとって一番尊い価値、それは優しさ。浅田さんの頭には純度100%の優しさエキスしか存在していないと思えるほど、雑味のない温かみばかりの短編集^_^ 獬がよかったなぁ(^^)五千年も人の悲しみを餌に生きる珍獣。これまで味わったことのない最高の悲しみに触れ、これ以上のものには出会えないと死を積極的に思考する。悲しみを無にしてもらってきた鈴子は獬が死ぬくらいならずっと不幸でいいと!隙を見て利を得ることばかりにエネルギーが充満すろこの世の中で、僅かに残る優しさの小さな花々^_^浅田畑にずっと浸っていたい^_^2019/08/05
いこ
106
①ふとしたことから伝説の動物を飼うことになった女性 ②銀行の返済が滞り、死を考える社長の前にふと現れた銭湯 ③三十年ぶりに再会した友の語る話はどこか奇妙で、いつの間にか… ④歌舞伎町二丁目「銀花」のママ、通称「マダム」が突然亡くなり… ⑤飛行機で隣り合わせた男性が語るリストラ話には、とんでもないオチが ⑥遠い昔に別れた女性を忘れられない男性に奇跡が ⑦真面目な編集者に降り懸った奇妙な事件の顛末は ⑧定年間近の、競馬好き大学助教授の身に起きた偶然の出会い どこかノスタルジックで不思議な短編8編。浅田節全開!2020/09/16