内容説明
ミステリ好きなら名前を知らぬ人がない名作です。舞台は昭和三十年代。福岡市香椎の岩だらけの海岸で寄り添う死体が見つかったのは、汚職事件渦中にある某省課長補佐と料亭の女中。青酸カリ入りのジュース瓶がのこされ、警察ではありふれた心中事件と考えた。しかし、何かがおかしい──と福岡の老警官と東京のヒラ刑事は疑問を抱く。うたがわしい政商は事件当時、鉄道で北海道旅行中。そのアリバイは鉄壁だった──時刻表トリックの古典にして、今も瑞々しい傑作ミステリ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ひろし
44
何気ない市井の風景から物語は始まるが、心中事件を調べていくと不自然なものが見つかり、事件の真相に疑問を抱いた刑事が捜査を重ねると犯人の巧妙な仕掛けにたどり着く…。「4分間のトリック」で有名な、鉄道ミステリーの先駆け的作品である。女性心理の機微を描いているのだが、清張という人はなぜここまで女性心理が書くけるのだろうと不思議に思えるほどである。2018/03/05
湖都
11
先日読んだ恩田陸『ドミノ』の一節に出てきたため、読んでみた。まず、昔懐かしい時刻表トリックが逆に新鮮で、主人公が犯人の飛行機利用を思いつかないところに時代を感じた。青函連絡船だし。60年も前の本なので当たり前だ。飛行機に関しては現代の国内線なら偽名で乗れるから、トリック自体が必要ない。時代を感じたり主人公が右往左往するのがもどかしいが、文章は簡潔で分かりやすい。それに、一瞬しか出てこない亮子という女の執念が強く感じる一作だ。2018/12/12
Munedori
8
三原刑事の推理に「飛行機は?」とツッコミを続けてた私。電報というところに時代を感じる。もっと早い時期に読みたかった。2016/02/03
ぽんたろう
6
あまりに松本清張のドラマが面白くて原作に期待してしまったけれど、脚本家がいいんですね。古くさく感じてしまいました。残念。 今どきの推理小説に毒されて王道から外れて歩んできてしまった不甲斐なさを感じています。いかんな。2017/09/30
こ〜じろ〜
6
有名な作品ではありますが、特に凄みを感じたということはなかったです。時間のトリックなどは少しわかりづらくもありました。しかし、いろんな視点に立って始終行われる考察には、まるで自分も推理しているような臨場感があってとても良かったです。最後手紙ですべてを締めくくるあっけなさが、変にリアルで僕は好きですね。挿絵に関しては特に何も感じず読み進めていきましたが、読後にもう一度ペラペラめくって見てみると、なんとなく良い味が出ていました。2014/07/30