内容説明
棟梁に褒められ有頂天になる大工、盗賊としての過去を隠した扇職人、対人恐怖症で五千石を棒に振った旗本の次男坊、玉の輿に乗る娘など、この江戸下町の長屋にはさまざまな人たちが暮らす。そして彼らを助ける証源寺の住職忍専。ふりかかる事件にも自分たちの知恵で切り抜けていく。そんな長屋住人たちを闊達な筆で描きだす人情時代小説。第6回柴田錬三郎賞受賞作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さと
84
表紙を眺めていると、今にも長屋の住人が慌てて出てきそうな何ともに賑やかで騒々しくてそれでいて本当に情け深く穢れの無い暮らしを羨ましく思えてくる。貧しいが故、それぞれにいかに生きるか、どう生きるか、体当たりで生きている中で道筋が見えてくる。それに抗わず互いの幸せを当たり前とする生き方に底知れない豊かさがある。長屋の日常を俯瞰しながら今を生きる自分を内省させられる。2019/06/08
佳乃
28
短編集かと思ったら、点と点が繋がるようになっていた。繋がりに繋がって、最後は綺麗に収まった感。2016/06/22
那由多
17
余分な隙間なくしっかり作られた時代小説で充実感があり、程よい緊張感が中弛みせず始終張られている。貧乏長屋の住人と、それを護る和尚さんと番太郎と寺子屋の先生。貧乏だからこそ清く正しく生き、人の幸せを我が事のように喜ぶ善良な人たち。派手さは無いけど、市井モノとして優れている良作。2018/06/28
gachi_folk
7
貧乏だけど、いや貧乏だからこそ肩寄せ合い皆で生きて行く長屋の面々。市井の暮らしの根幹がここにある。そして誰もが幸せになろうと頑張って行きている。忘れたく無い価値観がこの一冊には詰まっているな。2013/02/04
鮎川まどか@AnxAn
7
極貧ながらも力強く生きる人々が暮らす「かかし長屋」に起きる一波乱を描いた作品。 他人の成功を喜び、また、再スタートを励ます彼らの生きざまに心をうたれた。 傑作。2011/10/03