内容説明
エロ・グロ・ナンセンスが一世を風靡する昭和7年の浅草六区。秋月が脚本を書いている劇場・浅草偏奇館の踊り子の京子が殺され、隅田川に浮かんでいるのが発見された。先輩脚本家の中原は皆の反対を押し切り、「踊り子殺人事件」として舞台化し大成功をおさめるが、劇場の活気とは裏腹に、踊り子ふたりが次々と惨殺されてしまう。事件の真相を尋ねて、秋月は50年ぶりに浅草を訪れる……。戦争の跫音(あしおと)が次第に近づく日本社会を、巧みに作品にとりこんだ異色作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アヴィ
1
浅草にあった偏奇館という劇場の脚本家を務めていた秋月がその偏奇館が存在した昭和初期を回想するという、西村京太郎には珍しい一人称文体のミステリー。大正ロマンから急激に右傾化する世情を背景に、踊り子の連続殺人事件を追っていく。警察の横暴や、満州の実態などこの時代に上手く絡めて事件は推移していく。早い段階で真犯人が捕まったように思うが、そこからまだ一捻りあり、かなり重厚な作品に仕上がっている。2025/03/28
クロッチ
1
この時代の浅草六区は知らないけれど、情景が浮かんでくるような内容。西村京太郎の十津川警部シリーズ以外で初めて読んだ本です。2018/02/15
ふう
1
西村シリーズでもお勧めの1冊です。 時代を想像するのも楽しい内容です。2013/09/27
けんいち
1
最近じゃないけど、昔読んだ、最近の西村京太郎作品の中じゃ一番面白かった一作。著者自身が「お手軽に読める一本を書きたい」と何かのインタビューで答えてた記憶あるけど、お手軽に読めてしかも心に残る、ミステリ要素も面白い、とかなりお勧め。読後に電気ブランを飲みたくなる感じもたまらないw 70年代80年代に名作の宝庫がありながら、未だにこれだけの本を書けるって本当すごいと思う。ミステリの天才ですね。2013/02/14
如月光子
1
浅草全盛の時。殺人を犯してまで自分の劇場に愛着を!現実的ではないがありうるような・・。十津川警部以外でも書くのだ!という衝撃?浅草全盛の時の関わる人達の心情・・・。意外とおもしろかった。そういえば、西村京太郎自分で購入した記憶がない