内容説明
二〇〇一年、アメリカはまたも破産に瀕し、企業の大半が外国に買収された。ベトナム戦争中にばかげたスピーチ、ホーカス・ポーカスで新兵を鼓舞していたハートキは、帰国後、勤めていた大学を首になり、日本人が経営する刑務所の教師になる。だが、そこで大脱獄事件が発生した……ハートキがたどる波瀾の人生。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
MICK KICHI
85
<マンスリー・ヴォネガット>「ホーカス・ポーカス」(嘘を誤魔化す作り話) ベトナム戦争に将校として出兵し、国家権力に踊らされて犯した殺人と姦淫した女性の数が同じというある囚人の回顧録。ヴォネガット得意の短いパラグラフに毒と諦念とアイロニー満載のエピソードを積み重ね形式を取られている。その一つ一つが複雑に関連しながら過去の悲劇を暴き出していく。日本への言及(当時の米との経済格差、原爆投下、南京虐殺)もかなり深くされていて興味深い洞察もある。作者から投げられる問いかけは悲痛で悲しいが「それが人間なんだよ」 2019/03/13
chanvesa
18
『ガラパゴスの箱舟』でもそうだった記憶があるが、必然性が不明な、日本人や日本の登場。あまりいい気はしない。1980年代後半から1990年代初頭は、日本に対するインパクトを海外の人が感じていたのだろう。内容も散らかっている印象。ギャグやジョークが散りばめられいるのだろうけど、立川談志がまくらで話していた何年も言い続けていたジョークのように、面白いかどうかの内容ではなく、話者のパーソナリティがもたらす話の存在感だけなのだ。ヴォネガットに強い思い入れを持つ人には楽しい一冊なのかもしれない。2023/09/02
猫丸
16
知性が無いと決定的に不幸であるのだが、その不幸を認識しなければ不幸は成立しない。いっぽう、一応の知性を備えたとしても、実のところそんなに幸福を促進する作用もなく、むしろ知性的とはいえない愚行のほうが時間をつぶすには適している。愚行の力は強いのだ。例えば戦争など。ヴォネガットは北米の名門大学の学生に対して本書を書いたとおもう。硬直した思考と無思考は人間を人間でないものに変えてしまう。とらわれることが避け得ないなら、せめてとらわれた自覚をもって生きようじゃないか。どうせ人類なんて細菌の保存袋に過ぎないのだし。2023/05/20
記憶喪失した男
16
なかなか面白かった。ついにこれでヴォネガットの長編全読破。大学時代から読み始めて四十歳になってしまった。アメリカ最高の作家はヴォネガットだと思っている。2017/12/16
fseigojp
15
後期ヴォネガットのシニカルな哄笑 2016/06/30