内容説明
エンジンが大好きな組立工がいた。故郷の自動車エンジン工場勤務から、ある日、F1チームのエンジン組み立てメンバーに選ばれた。サーキットを転戦して世界を回る毎日。すばらしい日々だ。帰国休暇にはガールフレンドに土産をやり、土産話をするのも、その栄光の一部だった。3年の出向期間が終わり、故郷に戻った男を待っていたのは、しかし味気ない、退屈な生活だった──喜びのあとに訪れる悲しさ、“成熟と喪失”を描いた第111回直木賞受賞作ほか、傑作短篇が全6篇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
141
第111回(平成6年度上半期)直木賞受賞作品。表題作は、F1チーム組み立てメンバーに選ばれた日々を忘れらない男の心の葛藤を描いたもの。栄光の後の現実、そして短い喜びの時間とその後に無限に続く失意の日々を、抑揚を抑えたタッチでうまく描いている短編集。少し残念なのは登場する女性たちがあまりにもあっさりし過ぎていることだが、これも作者の嗜好なのかもしれない。 2013/07/15
hit4papa
40
華やかな過去から遠ざかってしまった人々、その周辺を描いた短編集です。日常にどこか満たされないものを感じ続ける男目線に共感しました。タイトル作は、F1のメカニックに抜擢され世界を転戦した青年が、任を終えて元の職場である町工場に戻ってくる物語。主人公は、過去の栄光を反芻するうちに、職場の中で異質な存在になっていきます。夢をかなえた後、残り火の燻り続ける様は、淡々とした書きっぷりゆえに、より虚しさが響きます。プロ野球の若手二軍選手に報われない愛情を抱き続ける女性「夏の終わりの風」他、全6編です。【直木賞】2017/11/12
JUN
21
表題作を含む6作の短編集。どうも彼の文体が自分にはしっくりこなくて、消化不良状態。「イブニング・ライズ」が一番良かったかな?2017/01/16
背番号10@せばてん。
21
【1994_直木賞】【1994_山本周五郎賞_候補】1997年1月21日読了。1997/01/21
きのこ
19
直木賞89/189 表題作で受賞。成熟と喪失てか、人生いい時だけじゃないって事。ならして平坦なら十分でしょ。2019/07/01