内容説明
反幕勢力、南下するロシア、莫大な利権を狙う海商たちの錯綜する思惑が極北の蝦夷地に結集する。ある密名を帯びた間宮林蔵は諸国を奔走し、権力者たちの野望うずまく中へと身を投じていく。それぞれの命運を背負った男たちの人生と、黎明期の日本を描く迫真の時代小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ehirano1
85
総じて幕末と同じではないか?という感想です。実はこうしたあまり知られていない幕末の前哨戦が何度も起こっていて、最終的に大爆発した(江戸時代終了)に至ったのではないか、と妄想しました。2017/10/21
ehirano1
66
「菜の花の沖(司馬遼太郎)」以来の高田屋嘉兵衛さん。別作者の作品での再会に素直に嬉しいです。本作の高田屋嘉兵衛さんキャラクターは「菜の花の沖(司馬遼太郎)」とは随分違いますが、逆に興味深いなと思ってます。2018/04/14
まーみーよー
15
信平の夢半ばの死から復讐へ。日本史音痴、特に幕末の薩摩藩島津氏、水戸藩あたりがでてくるとわからなくなってしまいました。(私だけだと思います)いやはや、不勉強でした。 歴史上の人物が作者、作品によって人物像の解釈を変えて動き出す点が歴史小説の面白味でしょうか。2020/07/14
眠る山猫屋
14
再読。蝦夷地の希望になりつつあった信平の非業の死。島津の裏切りを必死に切り抜けようと足掻き、けれど雪原の果てに、生き抜いた証を残すように死んだ信平さん。病に倒れて尚、前を見つめた野比さんも絶望感には勝てず、男たちはバラバラに。そして間宮林蔵が動き出す。一番夢には遠かった男が、喪われた友の夢を弔うために。 島津を追い詰めるそのやり方、ちょっと怖いくらい。そう容易く殺してはやらない、武士には残酷な復讐劇。2016/05/20
TheWho
14
下巻に入り蝦夷北方貿易を巡り島津重豪は、確執する水戸家臣蝦夷地開拓団50名を惨殺し、間宮林蔵は同士とも言える男を失う。また朝廷のフィクサーとも言える今一人の男も病没し、林蔵は、幕府の隠密として島津重豪の陰謀を阻止すべく暗躍する。正に波乱万丈なハードボイルド小説を読んでいる様で、登場人物の熱い生き様に心を打たれた。そして結末は、シーボルト事件を絡め幕末に繋がる史実に隠れた暗部を刳り出す様な緊張感あるサスペンスに出来上がっている。虚構の物語ではあるが、歴史好きにはお勧めの作品です。2015/09/15