内容説明
「大体みんな、三、四歳の時から一日平均六、七時間はピアノを弾いているのだ。たった一曲を弾くのに、例えばラフマニノフの「ピアノ協奏曲第三番」では、私自ら半日かかって数えたところでは、二万八千七百三十六個のオタマジャクシを、頭と体で覚えて弾くのである。(中略)すべてが大袈裟で、極端で、間が抜けていて、どこかおかしくて、しかもやたらと真面目なのは、当り前のことではないだろうか。そしてここでも類は友を呼び、蛮族の周りには蛮族が集まる……」(本文より)
目次
1 ホロヴィッツが死んだ
2 六フィート半のしかめっ面
3 神よ、我を許したまえ
4 女流探検家として始まる
5 タイム・トラベラーの運命
6 音楽が人にとり憑く
7 久野久を囲んだ「日本事情」
8 最初の純国産ピアニスト
9 ピアニッシモの残酷
10 鍵盤のパトリオット
11 カンガルーと育った天才少女
12 銀幕スターになったピアニスト
13 キャンセル魔にも理由がある
14 蛮族たちの夢
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
absinthe
123
生前の母に勧められて読んだ本。ピアニストの生活や、様々な巨匠たちの側面が生き生きと書かる。ミケランジェリにホロヴィッツ、ルービンシュタインなど巨匠たちの変わった癖も知ることができて面白いかった。久野久という悲劇の日本人ピアニストについてもこの本で初めて知った。(しかし久野久に関する記述は、批判もされている。) パデレフスキーのCDを買ったのもこの本がきっかけ。お勧め。
アセロラ@道東民
54
幸田露伴の妹であり日本のピアニスト第一号である幸田延、その弟子で異国で自ら命を絶った久野久、オーストラリアの大自然が生んだ天才少女アイリーン・ジョイス…皆この本で知った。リスト以来のカリスマピアニストで、後にポーランド初代首相にまでなったパデレフスキーの演奏は、ぜひ生で観たかったなぁ。子供の頃から一日何時間も部屋にこもってピアノに身を捧げているため、社会性に乏しくなりやすいピアニストという人種に愛情を示しつつ「ゆめゆめピアニストなんぞを女房にするものではない」と綴る中村紘子さんの茶目っ気が好きです(笑)2015/10/11
at-sushi@ナートゥをご存知か?
41
読んだのは随分昔の話なので、内容は殆ど覚えていないが、やたら文章が巧くて、美人で世界的ピアニストでカレーも上手でw 天はこの人に何物与えるつもりだ、と嫉妬したのを覚えている。 子供のころ一度だけコンサート(チャイコフスキーの協奏曲だった)に連れて行ってもらったが美しかったなぁ。 ショパンの協奏曲2番が好きで、CDを何枚か持っているが、ツィマーマン版が出るまでは、中村さんの情熱的な演奏がとりわけ好きだった。 R.I.P2016/07/29
むーむーさん
30
面白かった。検索したら独断と偏見があるという人も居るけど。2016/11/13
よしひろ
13
世界中のピアニストの破天荒な人生を紐解く。著者自身もピアニストであり、自分の経験も織り交ぜながら、面白く話が展開していく。文章と展開が一級品で、各ピアニストが記憶に残るエピソードと共に輝く。日本人では寺田延、久野久など。知らなかったピアニストの人生を知ることができた。コンサートをこなすピアニストは体力をかなり必要することはなるほどなと思った。2015/09/20