内容説明
戦中派は一度は捨てた命なのだから生死には恬淡だといわれる。しかし、一度捨てた命だからこそ、本気で大切にすべきではないのか。そして、戦後の日本がその出発にあたって存立の基盤であるアイデンティティーまで喪失したことの愚を、我々戦中派は黙視すべきではない。──日本と日本人の生きることの意味を、自らの戦争体験をたえず反芻しながら真摯に問いつづけた「戦艦大和ノ最期」の著者の熱い想い。没後、時を経ても、なお広い共感をよぶ感動の遺稿集!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しんこい
7
表題作は難しくて読むのやめようかと思いましたが、軽いエッセイもあるし、父の善意はなかなか読ませる。戦中派はどうして生き延びたかみたいな自省の念が強くて、戦争の苦しさを語り継ぐ意思も強いと感じました。それにしても定年55とも早いがご時世か。2017/06/12
Ted
4
「戦艦大和の最期」以外に発表したエッセーや評論などを纏めた本。簡潔明瞭な独特の文体で、文章にもネイビーらしさが感じられる。多くの戦友を失い自分が生き残ったことの意味を最期まで問い続けた苦悩が基調としてある。読書禁止の新兵時代、メンソレータムの効能書を貪るように読んでいた戦友の逸話からだけでも、当時のインテリ学生の活字への渇望がいかに切実なものだったかが分る。それに引き換え、これほど本が溢れていながら活字離れが止らない今の社会はいったい何なのか。この恥ずべき体たらくを当時の学徒兵が見たら何と思うであろうか。2010/07/26
ヨシモト@更新の度にナイスつけるの止めてね
0
東大法学部から学徒出陣し、敗戦後は日銀に勤務したという著者の、冷静で熱く、強靭にして柔軟な回想録。もっと長く生きて、バブルや小泉政権を見たとしたら、彼は何と言ったろうか。2017/02/16