内容説明
昌子は、九州旅行で知り合った経済官僚の堀沢と交際、結婚。堀沢は出世を目ざす秀才で神経質、強いエリート意識と、心の底を明かさない冷たさがあった。平穏で空虚な日々ののちに起こった、妹伶子と夫の失踪。宮城県作並温泉の山峡で発見された2人の死体に、新聞は不倫の恋の清算と書きたてたが、妹は夫を好まず、夫もまた彼女を敬遠していた……。若手官僚の死の謎に秘められた、国際的陰謀を描く、巨匠の力作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Aya Murakami
79
10年以上前にリアル書店で購入。 山道で牛に追いかけられているところを助けられたら…そりゃ惚れちゃうわな…。阿蘇にも間欠泉なんてあったのですね(今どうなっているかは分からない)。 官僚世界は怖いですね。公僕と言いながら様々な闇社会に通じているようです。詳しくは本書で。 ラストの注射…。アレはヤバイ注射ですね。ハラハラドキドキの展開でした。2024/02/23
Nozomi Masuko
12
若手経済官僚と結婚した主人公だが、几帳面で神経質、強いエリート意識、心の内を明かさない冷たさに違和感を覚えていた。そして突然起こった夫と実妹の謎の失踪。後に遺体で発見された2人は、世間には不倫の恋の清算とささやかれるが、納得のいかない主人公は真実を探るー。あらすじからの期待感が大き過ぎて、やや肩透かしをくらったかも。主人公が女中になるあたりはなかなかいい展開だったとは思うが。2015/12/30
グラスホッパー
6
だんだん謎が明らかになるのがおもしろかった。「山峡の章」というタイトルが、詩のようで美しい。主人公、昌子の心境をよくあらわしている。2023/09/22
裕由
5
この作品を読んで、作並温泉にいってみました。当時とだいぶ町並みがちがうようでした(あたりまえか!)。駅から温泉街まで歩いたのですが泣けてきました ^_^;2017/01/30
アメヲトコ
5
若手経済官僚の夫の不可解な行動と、その先に起きた事件から浮かび上がる戦後日本の闇。プロットにはやや強引さを感じますが、いかにもな清張節が久し振りに懐かしい。昭和35~36年の連載だけに、登場人物のキャラクターや生活描写に時代を感じます。2016/03/01