内容説明
高原のサナトリウムで私は療養中の恋人・節子と時を過ごす。私たちは魂の触れあいを重ねるが、次第に時間は限られたものとなってゆく。恋人たちの生の瞬間を描きとめた「風立ちぬ」など珠玉の6編を収める。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あーさん☆転スラ·薬屋·本好き·魔導具師ダリヤ続々アニメ最高です!!(≧▽≦)
97
ジブリの『風立ちぬ』の原作。ジブリより、話の展開が固いが、内容は細かい分かりやすい本(ㆁωㆁ*)2020/04/26
けいご
69
僕は物心つき始めてから知らず知らずの内に幸福を積み重ねていく事を覚えました。幸福が積み上がったり壊れたり誰かのものと比べたりしながら。そして誰かを愛する事に幸福を覚え、いずれそれにでさえ絶対に終わりがくる事に気がついた時「幸福の思い出ほど幸福を妨げるものはない」事に気づきました。でもそれもまた幸福の一部である事に気づくようになる為には今少し人生が必要となるでしょう。そんな1冊でした★死の香を纏った人間性が詰まっていて、それを美しいと思ってしまう感情は一体何処からやってくるんだろうね?2021/07/25
優希
68
繊細で美しい世界が描かれていると思います。風景が目に浮かぶようでした。純粋で、恋人との残された時間の幸福をかみしめているように思えます。ただ、同時に悲劇に酔い仕入れているような雰囲気も感じずにはいられません。情景と心理描写が混在している女性的な文章と、ちょっと鬱々とした雰囲気がありますね。だからこそこの物語は奇麗な絵のようなのかもしれません。死を描かないことが詩的な雰囲気を醸し出していると思います。他の作品も美しい純文学のような感じでした。国語の教科書を読んでいる気分になります。2014/10/21
催涙雨
42
私は、このような初夏の夕暮れがほんの一瞬生じさせている一帯の景色は、すべてはいつも見馴れた道具立てながら、恐らく今を措いてはこれほどの溢れるような幸福の感じをもって私たち自身にすら眺め得られないだろうことを考えていた。そしてずっと後になって、いつかこの美しい夕暮れが私の心に蘇って来るようなことがあったら、私はこれに私たちの幸福そのものの完全な絵を見出すだろうと夢みていた。(風立ちぬ 169-170)2021/08/01
けんさん
41
『静寂な自然の中に刻まれた情景描写と心理描写』 「風立ちぬ」 高原のサナトリウムで結核療養中の節子と主人公。 移りゆく二人の死生観、幸福観を、繊細に美しく描く。 どの作品も、じっくりと味わうには何度か読まないと…2022/09/04