内容説明
〔競馬シリーズ〕英国ジョッキイ・クラブ調査員デイヴィッドがノルウェーにやってきたのは、招待騎手ボブの起した売上金横領事件を調べるためだった。が、到着早々、何者かに命をねらわれ、その後も度重なる妨害を受ける。調査を阻むのはいったい誰なのか? 冬の北欧を舞台に繰り広げられる強烈なサスペンス!/掲出の書影は底本のものです
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
新地学@児童書病発動中
115
ひさしぶりに読んだディック・フランシス。面白くて、読み始めたらやめられなくなった。一人の騎手の横領疑惑を追う調査委員デイヴィッドが、ノルウェーを舞台にした巧妙な陰謀を暴き出す。次から次へと主人公に危機が襲いかかってくるのはフランシスの他の小説と同じ。イギリスではなく北欧を舞台にしているのが新鮮だった。克己心があり、自分の信念を決して曲げないデイヴィッドは、『利腕』のシッド・ハレーと同じ血が流れていると思った。小気味よい文体、血の通った登場人物、巧妙なプロット、フランシスはまぎれなく第一級の作家だ。2016/05/20
ぺぱごじら
18
北欧特有の地理的・歴史的・経済的事情が動機の背景にあり、日本人には少し難しいお話。ノルウェイの競馬場から盗まれた売上と、犯人とされる英国人騎手の行方を追う英国ジョッキィ・クラブ調査員。主人公の職業と物語の中で果たす役割に意外性がなく、真犯人による妨害が却って謎解きに近づくという間抜けさがあり、一部評論で『70年代ハードボイルドの苦悩』という説の根拠とされる『苦闘の為の苦闘/暴力の為の暴力』がそこここに感じられる。幕切れの手法も今一つすっきりしないが、これはこれでありとは感じる。2014-052014/01/13
bapaksejahtera
12
ノルウェーの競馬は層が薄く、騎手調教師を始め多くを英国に頼る。その中で英国のフリー騎手が競馬場の売上を拐帯し姿を消す。終にその捜査迄英国の競馬調査部に依頼をして来た。該敏腕調査員が今回の主人公。小説冒頭は主人公と現地CP調査部員が何者かにフィヨルドで襲われ海に投げ出される場面。以後秋深く寒気迫る同国での主人公の才気溢れる活動とそれを阻まんとする悪漢達を描き、終局で冬仕舞いをする山岳地帯でのサスペンスに至る。姿を消した騎手の実像、彼が隠した物は何か。プロットは中々良いが肝心の結末が我ら大衆読者には生温い。2022/07/11
たこやき
9
ノルウェーの競馬場で売上金を奪って失踪した英国人騎手を、英国ジョッキィズクラブ職員のデイヴィッドが追う。『骨折』『煙幕』は、特殊な設定による制約が大きな特徴となっていた分、本作はオーソドックスなミステリ作品という趣。金をどう奪ったのか? どこへ消えたのか? などから推理を展開していくデイヴィッドの推理の冴える。ただ、多少、推測がそのまま事実だった、とかがあり、良くも悪くもオーソドックスな話だな、という印象が残る。無論、それが悪い、というわけではないが。2013/03/24
NICK6
8
とても面白い。今回、敵側と対峙するのは、若くして立派な地位を持つ主人公。その若さゆえに、どちらかといえばコンプレックスは出会う相手の年配側の皆さんが持つ感じだ。これまでのシリーズヒーローとはひと味違う位置。お手並み拝見っていう嫌味目線が飛び交う。発生した競馬売上金の横領事件の調査を担うが、利害が直接ご本人にない以上、調査解決に至るまで受ける重圧も低い。でもだからといってつまらない訳では決してなく、そういう立場でも、闇の大きさが深刻に成程、きっちり優秀な仕事ぶりを発揮するのだからホントカッコイイ。 2023/10/07