内容説明
昭和十七年、菊池睦男が生まれる前にニューギニア戦線のボロホロ島で戦死したはずの父親が生きていたという。いや、生きていたが八日前に交通事故で死亡して、そのため一億円の生命保険金が睦男に転げこんでくるという。突然訪ねてきた男に、そう告げられても、睦男は、にわかに信じることができなかった。こんなバカな話ってあるだろうか? ――戦後幾星霜を経てなお戦いの傷痕いえぬ男たちが織りなす凄絶な生死の葛藤。「軍旗はためく下に」から構想十年、著者渾身の長篇推理小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
k5
33
すばらしい作品。戦死したと思っていた父が交通事故死し、保険金を受けとってほしい、と言われた睦男は、生きていた父が別の人生を歩んだということに違和感を覚え、父の戦友たちを訪ね歩く。過去を尋ねる、というミステリの王道にのっとったサスペンスとしての盛り上がりもさることながら、戦争文学としても読み継がれる価値のある名篇です。2020/05/04
koo
7
主人公睦男に戦死した筈の父親が1週間前に交通事故死し遺産が1億円ある事が連絡される。会ったことのない父親の生死をはっきりさせる為関係者を訊ねまわるのがメインストーリー。本当に父親なのか、父親なら何故戻って来なかったのか、父親でないなら何故名前を騙っていたのかという謎に戦争の悲惨さを絡めた社会派ミステリの佳作だと思います。1980年にこの様な作品を発表した所に作者の大戦への思い入れを感じますし実際久しぶりに戦争についても考えさせられました。2025/04/20
kanamori
1
☆☆☆2016/05/24