内容説明
手当たり次第に殺人を犯し、ニューヨーク全市を震撼させた連続絞殺魔〈猫〉の正体は?〈猫〉が通りすぎた後に残るものはただ二つ――死体とその首に巻きついた絹紐だけだった。おそるべき連続殺人をつなぐ鎖の輪を求めて、エラリイと〈猫〉の息づまる頭脳戦が展開される!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
45
ヴァン・ホーンの事件から犯罪科学者、兼探偵としてプライドを傷ついたエラリーは警察のスケープゴートにさせられた父の頼みで「猫」の犯罪を解こうとするが・・・。エラリーの事件の規則性を見出すのはプロファイリング的である。しかし、高村薫さんの「冷血」のようなことが起こる現在には最早、通じないだろう。精神分析が使われているのは時代の為か。私は「猫」よりも一人の女性のパニックになって叫んだ時の群衆の怯えようとその犠牲に身の毛がよだちました。若い二人のロマンスが挟まれているだけに最後の悲惨さが遣り切れないです。2013/01/06
goro@80.7
40
殺人鬼に「CAT」なんて名称を与えたからニューヨークの猫は大変な事になっちゃったじゃないの!と猫好きな皆様の憤慨が聞こえてきますが、無差別殺人にパニックになる様子は今でも起こり得るのではないか。特命捜査を依頼されたエラリイが推理する。無差別だと思われる事件に共通点はあるのか?70年近く前の作品だけど最後まで飽きさせず堪能いたしました。悩めるエラリイへの最後の一行が救いとなるのか・・・。名作だと思う。2016/04/23
とくとく
36
その日、新聞に掲載された猫の絵には、5つ目の尾が書き加えられた。“猫”によって5人目の被害者の首が括られたのだ。NY中をパニックに陥れる連続殺人犯に、傷心中のエラリーが挑む!心理的な要素というのが重視されている作品だと思った。可能・不可能というより、そうするだけの心理的理由があるという。前作で、死者を出してしまい、罪悪感に苛まれるエラリーと、巻末近くでの救済が見事だった。名探偵も人間だ、と感じる良作ですね。次は、『災厄の町』かな。2018/02/27
Tetchy
36
一番解決が困難とされるのは動機も関係性もない人物が通りがかりに人を殺す事件だと云われている。本書はエラリイのロジックはこのような無差別通り魔殺人事件にも通用するのかが表向きのテーマであろう。犯罪方法よりも犯人の動機に重きを置き、なぜ反抗に至ったかを心理学的アプローチで解き明かすエラリイ。しかしそれは犯人の切なる心理と同調し、時には自らの存在意義すらも否定するまでに心に傷を残す。最後の一行に書かれた救いの言葉がせめてエラリイの心痛を和らげてくれることを祈ろう。2010/06/10
jima
30
道尾氏が「プロムナード」で愛する本格ミステリーと紹介するだけ中身の濃い作品だった。9件の連続殺人事件。一ひねりも二ひねりもある作者のエネルギーに脱帽。2014/05/28