内容説明
古今の哲学や文学、映画を緯糸に憲法学者が織り上げるエッセイ・書評集。
目次
第1部 憲法のimagination(生きている;イェルサレムとアテネ;日本国民、カモーン! ほか)
第2部 ハムレットとドン・キホーテ(カール・シュミットのシェイクスピア;ドン・キホーテの夢;信じられない ほか)
第3部 憲法学は何を考えるのか(憲法学は何を考えるのか;憲法改正論議の不思議;ソウル学会日記 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
masabi
11
憲法学者長谷部泰男のエッセイ・書評集。お馴染みのコンドルセの定理、レオ・シュトラウスから学会についてなど幅広いテーマである。2015/11/05
うえ
8
「ハートが主著『法の概念』で描こうとした近代法の特質…法が未発達な社会では、社会生活における人々の権利や義務を定める規範は、特定の行動様式が慣行として人々に徐々に受け入れられ、模倣と同調を通じて定着し、実践されなくなることでやがて衰退していく。しかし、近代化が進んで…慣行として生成した一次レベルの規範を変動させるための二次レベルの規範が、これまた慣行として生成される。…この慣行は…衰退したりするものではない…どのルールが法としての妥当性を持つかを判別する専門的能力を備えた集団の生成を伴うからである。」2021/04/17
takizawa
7
憲法学の役割の1つは,必ずしも価値観を共有していない他者と共存する方法を探ること。何度か憲法9条論が出てくるが,絶対的平和主義は特定の生き方を他者に押し付けるものにほかならないという主張はとても説得的。憲法の原理や解釈のみならず,法とは何か(これが一番面白かった!ケルゼン・根本規範vs.ハート・認定のルール)といった哲学的な話題や書評,エッセイ(海外の学会日記とか)まで幅広く収録されている。2010/11/23
void
3
【★★★☆☆】エッセイ版(東大出版会「UP」)、いつもの長谷部。論点主張がやや切れぎれになってしまうが、新書より広範囲の話題が欲しいなら、一冊目にはまあいいかと。原意主義(憲法起草者が考えていたこと)が強く外国法を参照しての憲法解釈否定も根深い「14:特殊な国、アメリカ」、同時期の最高裁判決である砂川事件・苫米地事件の異同をさぐる「17:法と戦略」、従うべき「先例」であると判断する理由とは…「22:先例に従う」が良かった。あとエッセイタイトルが結構面白い。2013/11/25
liverpool0810
2
面白かった。アレントをバッサリ!長谷部先生はアリストテレス―アーレント―サンデル―的な「喧々諤々の議論を求める人達」がお嫌いなようで。というより、不毛で「信じれない」というべきか。民主政を合意形成のプロセス(正統性の調達)として捉えて、意思決定のプロセスという側面は重視していないようで、民主的意思決定への絶望っぷりが行間から浮かび上がってくる。長谷部先生の想定する身も蓋もないクールな世界像が現実なのだろうが、長谷部先生の想定している見識あるエリート(専門家)とは程遠い大衆の一人としては抗いたくもなる。2011/01/21