出版社内容情報
絶望の先の“希望”
「闇の中に草の小径が見える。
その小径の向こうのほうに花が一輪見えている」――
東日本大震災を挟む足かけ二年にわたり石牟礼道子が語り下ろした、解体と創生の時代への渾身のメッセージ。映画『花の億土へ』収録時の全テキストを再構成・編集した決定版。
【著者紹介】
1927年、熊本県天草郡に生れる。詩人。作家。1969年に公刊された『苦海浄土――わが水俣病』は、文明の病としての水俣病を描いた作品で注目される。1973年マグサイサイ賞、1986年西日本文化賞、1993年『十六夜橋』で紫式部文学賞、2001年度朝日賞、『はにかみの国――石牟礼道子全詩集』で2002年度芸術選奨文部科学大臣賞を受賞する。2002年から、新作能「不知火」が東京、熊本、水俣で上演され、話題を呼ぶ。石牟礼道子の世界を描いた映像作品「海霊の宮」(2006年)、「花の億土へ」(2013年)が金大偉監督により作られる。『石牟礼道子全集 不知火』(全17巻・別巻1)が2004年4月から藤原書店より刊行され、2013年全17巻が完結する。またこの間に『石牟礼道子・詩文コレクション』(全7巻)が刊行される。2014年、初の自伝『葭の渚』(藤原書店)刊行。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
カネコ
4
○2014/07/19
マウンテンゴリラ
3
近代的なものに異を唱え、残すべき、あるいは復活させるべき美しき魂を訴え続けてきた著者のラストメッセージ。私ごときがくだくだと拙い文章で書き散らすと、かえってこの本の凄みが薄れる。しかし、東日本大震災と、福島原発事故を体験し、政府や東電の対応を見てきた日本人、そして、それに対して自分自身はどうそれに反応してきただろう。そのような無力感に苛まれる日本人に対するラストメッセージ。水俣病をはじめとする高度成長期の公害問題、温暖化やオゾン層破壊等の地球環境問題、そして今回の原発問題。→(2)2018/08/13
belier
1
2010年から翌年にかけて行われたインタビュー。東日本大震災を間に挟む。わりと自由に話した内容をそのまま文字にしていているようで、文章としてはまとまりがないが、東北の震災と原発事故のあとに石牟礼道子が何を考えていたかがわかる。災厄にあった人に対して彼女がとる態度を「悶えて加勢する」という独特の言葉で表現する。たとえ問題解決につながるのでなくとも、被害にあった人と一緒になってともに苦しむ。それが祈るということだという。東京のチッソ本社前に座り込みをしたとき、名乗らず加勢した人がいた話もそれとつながった。2022/12/30
マウンテンゴリラ
1
この、石牟礼道子氏のラストメッセージが書かれてから10年余り、ご本人が亡くなられてから4年余りが経つが、あらためてその思想の偉大さを感じるとともに、そのメッセージが10年たった今でも、まったく社会、特に政治に、真摯に受け止められていない絶望感も感じた。「天の病む」,「毒死列島」など、その思いのきっかけは、もちろん氏が実践活動としても取組んだ水俣病の事件に端を発するものであろうが、まさに本書の執筆時に発生した、福島原発事故を受けて、その思いはいかほどのものであっただろうか。→(2)2022/11/20
pom
1
水俣病について全く知らなかったことに愕然とした。東日本大震災のことを語られるときに支援物資も並んで受けとり暴動も起こらない素晴らしい日本人ってたびたび出てくるが上に飼い慣らされているのではないか。チッソから補償金を受け取ったことで陰口を言われ違う形の差別を受けること、被害者が差別の対象になったり、すぐに風化してなかったことにされたり過去の過ちから学ばない謝罪はしない。すごく福島とかぶる。日本って本当に素晴らしい?2014/11/16